幼稚園のバザーお手伝いご奉仕で集まったとき、手芸ママに指貫が珍しいねと指摘され、つい和裁してたの、なんて言ってしまった。
そしたら浴衣縫いたいから教えて、一緒に縫いましょうよなんてことになってしまった。オーマイガッ。
縫っていたのはもう10年も前だよ。でもまあ浴衣か。なんとかなるかな。カーサンも1枚縫いたいな。
などと雑念にまみれてオッケーしてしまった。浅はかすぎる。
縫っていた当時のノートを引っ張り出しても、じぇんじぇん思い出せないのだ。縫いはともかく、ヘラ付け。えーと。えーと。
こりゃいかんとネットをさまよったら、まあ今は縫いたい人がいっぱいいるのね。そしてそういう人向けにDVDも出ていたりする。出しているのが知ってる和裁所だったりする。時代はDVDですよ。徒弟制度でうんたら言っていたウチのセンセイではじぇったい思いつかない手法だな。
身元がバレそうとびくつきつつ、背に腹は代えられん、DVDをぽちっと。
見たらこれが衝撃。わけもわからず言われるままに作業だけを覚えていた当時の自分に見せてやりたい。理屈が通っているのだ凄まじく。
あんなに苦労したあそこもあんなところも、こうしていたらもっと楽に、そしてキレイに縫えただろうに。愕然。
他所の和裁所のやり方を学びたいと熱望していた、年上の先輩を思い出した。彼女はきっと、腑に落ちなかったんだろうなあ。
上下関係が厳しくて、上から下へが当たり前のあの場所で、「こうしたほうがいいのでは?」と噛み付いては「独立したら好きなようにしろ」と頭ごなしに苦虫噛み潰したような顔されていたっけ。
ちゃんと咀嚼しようと思ったら、ああなるんだよなあ。
言われるまま、「何がなんでも覚えなくちゃ」と機械的に飲み込んでいたカーサンは結局、10年ブランク空けて記憶喪失状態だもんな。情けなか。
今になって知った「理屈の通る方法」で縫ってみたい、とも思う。同時に、そうしたら、カーサンにはコレがある、としがみついていたワラが粉々になって風に舞っていくような喪失感もある。
しかし背に腹は代えられんのだよ。DVD見てノートを取り直そうと思う。
今度は、咀嚼したい。あの3年間でできなかったことを、やってみよう。と日記には書いておく。
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