日々精進 《日比野 桜》

 

 

きみのきもち。 - 2005年09月16日(金)


お昼からのんびりと仕事をしていた時です。
出入り口の防犯ゲートが「ビー」って鳴りました。

クレジットカードなどの磁気カードでも
反応して鳴る事はあるんだけど
まぁ大抵、商品に付けている防犯カードの
取り外し忘れが主です。

または本来の目的の万引き。

走って入り口に行くと
小学校4年生ぐらいの女の子が
びくびくした目でこっちを見ていました。
手にはウチの買い物袋。

「すみません。管理カードの取り外しが
あったようなので商品を見せてもらっていいですか?」

と言うと少女はいきなり頭を下げ始め

「ごめんなさい!」

「??」

「万引きをしてしまいました!」

「!!」

「親には言わないでください!見逃してください!」


・・・こんなに素直に謝られても、困る。


「あのね。取っちゃったんだから
悪いことを君はしたんだよ。」

「ハイ分かってます!もうしません!」

「うん、じゃぁ事務所行こうか」

「見逃してください!うわぁぁぁぁん!」


泣き出される。


良心は痛むが、悪いことは悪いこと。
ちょうど出勤した店長と一緒に
少女を事務所に連れて行くことに。

取ったものは
鉛筆10本、下敷き2枚、メモ帳3冊
大判メモ帳2冊。消しゴム2個。

プレゼントでノートを買い
そのノートを入れた買い物袋に
せっせと商品を詰め込んだ様子。

んで管理カードがついてたのも気づかず
そのまま外に出たのだそうだ。

少女はなんか知らんけど
やたら傷だらけなのが凄い目に付いて。


まぁその理由は後からわかったのだけど。


親に知られるのがイヤみたいで
少女は一言も喋らない。

喋らないこと、ゆうに30分。

店長は優しいので
「警察には言わないって約束するからお家の電話番号教えて?」
って家の電話番号と名前だけを聞いたのだけど

泣くばかりで何も言わない。

どちらかというと店長よりもワシの方が
結構短気なんで、口火を切る。

「店長、警察呼びましょう。埒があかない」

と言うと少女は叫び出して

「警察には言わないって言ったのに!」

って怒り出した。


「何も無かったことにしたいやろうし
ここから逃げ出したいやろうけども
悪いことをしてしまったって言うのは消えんしね。
喋ってくれないなら警察に言うしかないんよ。」

店長も心を鬼にして

「そうやね。あと5分待とうか。
5分待って喋ってくれなかったら警察に電話しよう」



「〜〜〜〜〜ッ」

・・・少女は唸りながら喋りました。



正直、悪い商売をしてる人の気分になって
すんげえ気分悪かった。
いや、悪い事をしたのはあっちなんだけど
誘導尋問ってこんなイヤなことなんだ・・・


「じゃあ俺、親に電話してくるから
何かお菓子食べさせてあげて」

と事務所を出る店長。

お菓子っつーたって冷蔵庫にあんこ餅しかない。

・・・・・・(-_-;)



■その後の会話■

桜「・・・・・・あんこ餅、食う?」

娘「うん」

素直に答える少女。何か不思議な感じ。

桜「じゃあさ〜黄粉かけるから
好きなところでストップって言わやんよ〜。
言うまで掛けつづけるけんね」

娘「あはは〜ストップ」

と妙に和やかな感じになってきたわけですよ。
さっきまで泣き喚いてたのが嘘のよう。

桜「餅好き?」

娘「うん好き」

桜「腹へってた?何か昼食うたね?」

娘「ちゃんぽん食べた」

桜「そっか、も一個食うか?」

娘「うん」

少女はバックをゴソゴソと漁りだして
割れたセンベイを取り出したです。

娘「食べる?」

桜「くれんの?」

娘「うん」

桜「割れてるやん」

娘「あはは」

こんな素直な子なのに万引きしたとか
少し信じられなくなってきてしまった。


桜「・・・ねぇ、何で万引きしたん?」

娘「・・・お兄ちゃんがね」

桜「お兄ちゃん?」

娘「うん、お兄ちゃんが取ってた」

桜「真似したん?」

娘「うん」

桜「何でそんな馬鹿なことしたん?」

娘「うぅ・・・・・・えぇぇん」


よしよしと頭を撫でで
ハンカチを水に濡らして目を冷やしてあげながら
何かもうやりきれない気持ちになる。


もうね、万引きとかしないで遊びにおいで。
何か買っちゃるけん。
って言ったら、うんって笑ってた。


そしたらよ。

少女の父親らしき男が事務所に入ってきた。
んで、少女をボコボコにし始めた。
父親は酒臭かった。
少女が泣きながら父親に何か言うけど
叫び声と泣き声で何を言ってるかわからない。

私は動けない。
泣き出しそうだった。
貧血みたいに立ってられなかった。


その後、私は店長に事務所から出された。
書類とかいろいろ親に書いて貰ったみたいだ。

万引きした分、買取してもらって
少女は真っ赤な顔で父親に引きずられるようにして
帰っていった。

私は少女とみつめあっただけで
何も言えなかった。


私の職場の後輩が
あの少女の父親は近所の人だよ、って言った。

「あの父親は酒を飲むと暴力を振るうらしい」

よく夜に叫び声や「助けて」って
聞こえるんだそうだ。

私は鳥肌が立ってしまった。
怖くて。


私はいつも
何もできないのだと実感させられる。




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