冬の森の中にて迷う夢見る。来た道を戻ろうと振り返ると、足跡は既に雪に消されてしまっていたのだ。日は沈み、どんどん暗くなってくる。頭の上では裸の木の枝がぴしぴしと音をたてる。そのとき、遠くから音楽が聞こえてきた。音の先には小さな灯りがあった。雪をこいでその方向へ急ぐと、こちらを見て手を振る人びとがいる。どんなに安心したことだろう。取り返しのつかないことになるところだったのだ。夕方から留学生向けの授業。スロベニアから来ている女の子は、ホームシックに耐えかねて先週いったん帰ってきたという。スロベニアはもう雪が積もっていたらしい。ここも、きっともうじき雪だ。