日々雑感
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2004年01月08日(木) |
バナナチップの思い出 |
友だちの家、親戚の家、親に連れられて行く誰かの家。小さい頃に訪ねた家のことはよくおぼえている。黙って座りながら、そこいらにあるものを熱心に見つめ、触り、空気ごと自分の中に取り込んでいたのかもしれない。
父方の曽祖父のことは「どどのおじいちゃん」とよんでいた。「どど」とは「魚」のこと。縁側から見下ろせるところに鯉の泳ぐ小さな池があったのだ。縁側の板目は日の光で温かかった。隅っこに置かれていた鯉の餌の入った紙袋。大きな口を開けて水面に浮かんでくる鯉が面白く、でもどこか恐ろしく、いつも少し離れた場所から、弟とふたり、餌を投げ入れた。
また、お寺のそばにあった友だちの家。居間にガラス戸の付いた大きな棚があり、そこにはいつも袋入りのバナナチップが置かれていた。黄色い縁取りのされた袋にはバナナと猿の絵が描かれていて、それを眺めながら、あれはどんな味がするものなのかと、まだ一度も口にしたことのないお菓子に、ほとんど想い焦がれた。けれども、食べてみたいとはとても言い出せず。その後しばらくたって自分で買ったとき、どんなに嬉しかったことだろう。
友人から郵便でバナナチップが届き、思い出した次第。バナナチップはもうずいぶん長い間、好物、かつ、自分にとって特別なものなのだ。
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