ときどき古い小説を読むことがある。
古いと言っても、源氏物語まで古くはない。せいぜい明治から大正期に かけてのものなのだが、そこで描写されている風景は確かに「古い」と 思わせる。ただ、主人公の心理の方はそれほど古いとは思わない。自分 にも通じるものを発見することもある。
人間の心の裡というものは一世代二世代程度の時を経たぐらいではそう 簡単に変わりはしないものなのか。それとも自分自身が古い心の有り様 を有しているのか。
これを問いつめるのは不幸になりそうだからやめておく。
しかし、そうやって自分の感情を追い込まない当たり、既に感情がさび 付いているのかも知れないが。
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