最強の星の真下

2004年04月17日(土) Nutcracker!

マシュー・ボーンの『くるみ割り人形』を観た。

ずっと幼い頃、私は確かに『くるみ割り人形』を観たことがある。
はずなのだが、その記憶はぼんやりと断片的だ。映画だったのか舞台だったのかも明白ではない。
母に聞いてみても「くるみ割り人形?そんなの観に行ったことあったかしら。無いんじゃない?」というていたらく。
その時弟も一緒にいたような気がするので、もしかすると母は愚図る弟の面倒に手一杯で碌に観る暇もなくて、だから覚えていないのかもしれない。

でも左側に大きな柱時計が配置されておりその時計の前で人形が踊っている場面を覚えているので、おそらく映画だったのだろうと思う。
柱時計が真夜中12時を差し、ボーン、ボーンと鳴り出してパステルカラーのおとぎの世界が始まる場面。
大きくカーブした階段があって。色々なものが跳ね回って。
突然踊っていたあれこれが消え失せパタッと静まり返る場面。
そんな場面が私の脳味噌には焼き付いている。

今もくるみ割り人形の曲が好きなのはその記憶があるからだ。
でも残念ながら、幼少時の私の興味は跳ね回るパステルカラーのおもちゃ達であってストーリーではなかったらしく、終わりがどうなったのかは全く覚えていない。

今回の舞台はその記憶を鮮明にしてくれるかもしれない。という期待もあってとても楽しみにしていた。


・・・凄い色彩感覚だった。

前半はモノトーンでストーリーが進行する。
床は白黒チェック、孤児院のお仕着せはグレー無地、監督係の夫婦とその子供達も白黒の服。慰問のご婦人方、紳士方もみんな白黒。

これが後半になると、いきなりどピンクに黄色、スカイブルーと色が溢れ、渦巻き模様に水玉模様、波模様と、これでもかと言わんばかりに派手なピエロ調の服を着た妖精(?)達が踊り回る。

背景もシュールだ。
妖精達のパーティー会場に続く道が、ダリ顔負けの、舞台のど真ん中にぱっくり開いた口紅付きの口だったり。

なるほどこれが現代バレエというものか・・・。
いやもしかして、現代劇をバレエでやった、という方が近いかな?

そういえば以前、欧羅巴のどこだかから来た現代バレエ団も何だかよく分からない舞踊を観せてくれたものだが、共通して言えることは、「美しい」「綺麗」「幻想的」と単純素直に言えない舞台だという事かな。
古典的なバレエであれば、人の身体の美しさなどを素直に賞賛出来るのだけれど。


これはこれで面白かったし、実は「もう一度くらい観てもいいかも」とも思ったけれど、幼少時の薄暗い記憶を補強するようなものでは全く無かったのがちょっと残念。


・・・くるみ割り人形て、あんなオチだったっけ・・・?
駆け落ち。


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桂蘭 [MAIL] [深い井戸の底]

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