今日も奏多は休み。と思った。授業には来てなかったから。 そしたら、メールが来た。「今学校。もう帰った?」 電話してみたら、ずーっと先生と話してたって言う。 あーーーーーー、そういうことか………。
久々に彼女と学校で再会したけど、(メールはずっとしてたし) はぁーー。もう、決めたんスね…。 そうか、もう決めちゃったんや。
「これからどうすんの?」 『んー?稼ぐっスよぉぉーー!』
「みんな、心配してたよ?」 『そうか。でもなー…。』
「みんなビックリするやろうな。」 『別にそんな気にしーひんやろ。』
「何がアカンかったん?」 『んー、団体行動がアカンねん。』
決定や。彼女はもう決めてる。紙ももらってきはった。 紙は、奏多の言うとおりペラペラの一枚だけ。
『この紙一枚で縁が切れる、って言われたわー。ははっ。』
紙一枚。軽いのに、重い一枚。
そして、相変わらずの口調で 『今日もっかいオカンと話すわー。』 『土曜には出しに行くわ。あと一回っス。』 って言った。
もう、なーんにも言えん。 止めるコトすら出来ないって、そんな勇気無いって、 前に言ったでしょ?あたしは、しょせん憶病者。
っていうか、聞いても、悲しいとか思わんかった。 そうやって、いつも感情を表に出せない。 本人の前では。 そして、独り、後になって、ウダウダ考えてしまうこの根性の悪さ。
彼女の口からは、『辞める』って言わんかった。 もちろんあたしの口からも。 二人とも、普通に、淡々と話してるけど、 二人とも、具体的には話そうとしなかった。 二人とも、ふっ。と、茶化して誤魔化す。
説得しようと思えばできたはず。 しなかった。いつも避けて。そーゆー時だけ壁ができて。 きっと、あたしは奏多がクラスにいなくても、 夢に向かって進んでいけるんだろう。 そして、そんな姿を、二人はまた、普通に見られるんだろう。 状況が違うのに。ある一定の壁を作りあって、 そんな危うい状態で、私達の関係は続くのだろう。 この件に関しては。
そう、ピエロのこととか、そういった世間話の類いでは、 私達は今までどおりの関係が続いていく。 ライブに行ったり。メールしたり。
そんでいいのかなんて、考えられない。 今はただ、お互いに現実逃避してしまうだろう。 いつの日か本気で笑いあえる日がくればいいけれど。 私達の元々が、過去を知り、過去を抹消しあって、 それでこそ成り立っている関係だから、 そんな日がくるのは程遠いけど、 この件に関して、冗談を言い合えるようになれたら、 二人にしては上出来だと思う。
|