月の輪通信 日々の想い
目次|過去|未来
学校帰りのアプコが今日はやけに早足で家への道を駆け上がっていく。 「アプコ〜!ちょっと待ってよ。どうしてそんなに急いでるの?」 山道を一人歩きさせないように、あわてて駆けていくアプコのあとを追う。 「あのね、あのね。アユ姉ちゃんのお手紙を早く読みたいの。」 弾む息で振り返りながら、アプコが答える。朝、出掛けにアユコから「帰ってきてから読んでね。」とお手紙をもらったのだという。 ランドセルを置くのももどかしく、玄関口においてあった小さな封筒の封を切る。
「おかあさん!宝探しだって!」 アプコが弾んだ声で手紙を見せに来た。 「ぷれぜんとのあるところは � ,錣燭靴燭舛里悗笋里覆� �◆,弔�えといすのあるところ �� おさるとクマとペンギンのついているところに、はいってるよ。さがしてね。」 几帳面なアユコの鉛筆の文字で、アプコのためにひらがなとカタカナばかりで書かれた手紙。アプコはすぐにピョンピョンと階段を駆け上がり、女の子部屋へ捜索に向かう。
�,鉢△蓮△垢阿砲錣�ったのだけれど、��がよくわからない。 「おさるとクマは、わかるんだけど、ペンギンがわからないの。」とアプコが困った顔をしている。 ゴミ箱のイラスト、窓際のぬいぐるみ、おもちゃ箱のお人形・・・・。 アユコとアプコの二つの学習机が背中合わせに並んだ小さなコーナーには、女の子らしい動物のグッズやかわいいイラストのついたものがたくさん散在している。その中から「猿、熊、ペンギン」のトリオを探す。
「ふぅ〜ん、おねえちゃん、上手に隠したねぇ。」 私は、洗濯物を取り込みながら笑ってみていたけれど、アプコのあまりの苦戦振りに一緒に捜索に加わった。 「あった、あった。」 アプコが見つけたのは、窓際のフックにかけてあったアユコの水玉模様のトートバッグ。そのポケットのところにぶら下がっているアユコ手製のマスコットはまさに、「おさるとクマとペンギン」だ。 喜び勇んでバッグを開けたアプコは、中から黄色いマフラーをひっぱり出した。それは、アユコが学校あの選択科目の実習で初めてこしらえた黄色い手編みのマフラーだ。ちょっと短めのマフラーは、アプコにちょうどいいサイズのようだった。 「うわぁ、マフラーだ!」 アプコはさっそく、マフラーをぐるぐると首に巻きつけ、楽しそうに笑う。几帳面なアユコがキュウキュウときつめに編んだマフラーは、ふわふわ柔らかとはいかないけれど、アプコは大好きなおねえちゃんの手作りの品をプレゼントしてもらったことが嬉しくてたまらないのだ。
アユコって、ほんとにアプコを喜ばせるツボを心得ているなぁ。 学校の課題で編んだマフラーも、内緒の楽しい演出によって、アプコにとっては大事な宝物になる。 「おねえちゃん、みつけたよ!」と駆け寄るアプコに帰宅したアユコがニコニコ笑う。 姉妹っていいなぁとほほえましく思う。
|