月の輪通信 日々の想い
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最近の父さんは、工房での仕事のほかに、教室やら工芸会やら外での仕事も多い。 黙って土に向かいさまざまな色彩を生み出す工房仕事と違い、会議をしたりイベントを企画運営したりする人間相手の仕事は、思いのほか、人のよい父さんを疲弊させる。 外出中に滞った工房仕事を帰宅後の夜なべ仕事で補いながらも、昼間の会合でのやり取りや明日の打ち合わせの段取りに気を取られ、なかなか集中したお仕事モードに戻れなくて大きなため息をつく。
「お父さん、また、ため息をついた。」 「ため息ばかりつくと、幸せが逃げちゃうよ。」 心ここにあらず。気がつくと癖のように溜息をつく父さんを見かねて、娘たちが笑う。 「確かに、体の中の元気が一気にこぼれだしちゃう気がするね。」 「はいはい。コーヒーでも飲んで、元気を補充!」 気を取り直した父さんは、無理をして笑う。
昨日、何かの折に父さんがヒンヒンと不自然な呼吸をしてた。 体調でも悪いのかとびっくりして声をかけたら、 「ちょっとため息を吸ってみた。」 と父さん。 確かにため息つくと体内の『気』が抜けちゃうような気がするから、ためしにため息を吸ってみているのだという。
この人ってばもう、大真面目な顔をして、なんてまあ、おもしろい。 「で、どう?効果ある?」 と訊いては見たけど、あわただしい工房仕事のさなかに奥さんがクスッと笑わせてもらった分だけ、ちょっとした効果はあったんじゃないだろうか。
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