ボクハウソツキ  -偽りとテレコミの日々-
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2002年09月14日(土)

仕事で来た東京の東の外れ
新しくできた駅の、まるで新宿駅のような立体的な造りの
駅前スペースには店舗どころかポスターさえ無く
外から差し込んでくる街頭の光が幾何学的な模様を創り出していた
9日のことだ

もしもし、ユリです。 

ちょっと意外だった。というか、もう引っ越してしまった思い
すっかり記憶から欠落しつつあったので、一瞬反応し損ねた

今日で最後なの。部屋は引き払って明日には東京を出るわ 

半月ほど前に最後の夜を満喫したつもりのボクは
正直、どうでもいいやって気持ちになっていた
だが、電話の先に女性がいると
半人前ではあるがテレコマーとしての習性で誘いをかける

そうか、東京にいるのは今日までなんだね。
よかったら最後の食事をしにいこうか?


2時間後、居酒屋で食事を終えたあと
繁華街の外れにあるホテルで最後の夜を過ごす。

自分から連絡をとってくるのに
彼女はいつも自分から誘うことはしなかった
食事もセックスも
それが彼女に残された最後の良心であるかのように

ボクの心はもう離れていた
そう、離れていたはずだった。

最後に抱かれた時、ユリは泣いた
ボクは戸惑った
そんな気持ちが彼女にあるとは思いの外だったから

シバと別れるのがつらい
もっと早く出逢うことができていれば
もっとたくさん一緒にいられたのに


彼女にとって初めてのタイプであるボクの行動に
いつも微笑んでかわすような常識人
そんな彼女がはじめて見せる剥き出しの感情だった

ボクはキレイで中身のない言葉で応える
同じ気持ちだよ、と。
明日、空港から遠くの街に旅立つ彼女への
最後の手向けであるかのように

翌朝、小ぶりな旅行カバンを右手に
羽田までの切符を買うユリ

昨日は変なこと言ってゴメンね。シバを困らせちゃたね
これで本当にサヨナラね。短い間だったけどありがとう、さようなら。


通勤途中の人が行き交うターミナル駅でさよならを繰り返すユリ。
ボクは何も言わず、多少強引に引き寄せてキスをする
驚いた彼女の目には少し涙が滲み始めていた

電車通勤は苦手なんだよ
いつもと違う朝だって、9時になれば生きるための苦痛が5時まで続くんだ
ユリとは違うホームに向かうボクは、電車に乗るまで振り返ることはなかった。




どうしてあなたは遠くに去って行くのだろう
僕の手はポケットの中なのに


シバ |MAIL

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