珈琲の時間
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40代くらいの男の人が買い物に来た。 「仏事で使うから」 そう言った瞬間に、とても詰まった声で 「ちょっと...すいません。」 と言って、口を押さえて瞳を伏せた。 涙をこらえている。
大切な人を亡くしたんだね。 ぎゅうっと苦しくなったけど、 もらい泣きしそうだったけど、 気を引き締めて、まっすぐ見返した。 こんな時、感情は恐ろしいくらい真っ白で、 まっすぐ瞳を見つめ返す事でしか、 精一杯の誠意を表現出来ない自分がいる。 頭の中では様々な言葉が渦を巻いているのに。
一礼に気持ちを託そう。
それは自然の行為。つまりはそういうこと。 頭を下げれば良いってもんじゃないでしょ?>>
返事を返す必要も無い。 人の話を受け入れる状態にあるとは思えない。 ただ、黙ってそこにいて、話を聞いて、 ときどき「そうだよね。」と相づちを打てば良い。 誰も意見なんて求めていないんだ。 自分の気持ちを確認して、 見つめ直すゆとりが欲しいだけなんだ。
そこに見えているのは第三者では無い。 そこに見い出したいのは誰でも無い自分。 だからしっかりと瞳を見つめる事は大事。
まっすぐ見返してくれたなら、あなたは大丈夫。 もしも目をそらしたりしたら、あなたの負け。 興味が無ければ、目を合わせなければ良い。
しっかりとしたあなたを見たいから、 しっかりと見返してあげる。
一回だけね。
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