私の家の近くには、急でも緩やかでもない微妙な感じの、長ったらしい坂がある。気が付くと私は全裸でそこにいた。 時間は真夜中で、ザアザアと雨が降っていて冷たい。 一人の男が私を倒し、何か言いながら武器で体を滅多刺しにしてきた。 私は、そうされても死なないし痛みもないことを知っていたので、黙って殺されるふりをした。 痛みはないが、刺されるとき何か気持ちの悪いような嫌な感覚がした。 男が刺すのをやめた時の格好のまま、こっそり呼吸をする。バレていない。 男は次のターゲットを見つけて、やはり全裸のその男性を同じように滅多刺しにした。もちろん死んではいない。 男はもう一人、全裸の男性を滅多刺しにした。 その2回の作業は私の背中側で行われているので見ることは出来ない。 私は、男に生きているのがバレないよう、体を動かさないように注意しながら逃げる機会を窺っていた。 男が4人目のターゲット(男性)を滅多刺しにしていた時、そのターゲットが逃げた。 もう一人、控えさせていたターゲットも一緒に逃げた。 男が私の方を振り向いたので、必死に死んだふりをした。 自分が最初から目を開けていたかどうか忘れたので、男にバレたかもしれないと思うと冷や汗が出た。 しかし男は3人の死体が生きているとはまったく思っていないらしく、 「くそ、待ちやがれ!死体はそこ動くなよ!それから、もうちょっと頭を下げる」と言いながら、事態を観察する間に持ち上がってしまった3人の死体の頭を手で地面に押し付けていった。 私は「こいつ馬鹿だ」と思った。他の2人も思ったに違いない。 男は逃げたターゲットを追って、私の背中側に走っていった。 私は体を起こし、初めてそちらの方向を向いた。 他の2人の犠牲者の姿が目に入った。私と同じように体を起こし、逃げる機会を窺っていた。 男はこちらと反対側を交互に見ながら逃げた2人を探しているようだった。 はじめは遠くの方にいたが、私たちが逃げられないでいる間に結構近くまで戻ってきてしまった。 これ以上こっちに戻ってきたら、もう逃げられなくなるかもしれない。 3人ともそう考えた。男が反対側を向いた瞬間、3人同時に走り出した。 2人は団地の方に逃げたが、私は入り組んだ道から自分の家を目指した。 他の二人がどうなったかは分からない。 男が追ってきているかどうかもわからないが、振り返らず走った。 途中「私だけ体が女だけどバレないかな」と今更なことを考えた。 恐怖に耐えられず、途中の団地のどれか一つに身を隠そうと思ったが、 ランダムに選んだ団地の中の、ランダムに選んだ列の階段を上って隠れたのに見つかって追いつめられるという怖い夢を何度も見たことがあるので、 団地だけはダメだと思い、我慢して家まで走る。門が見えた。 私は門を飛び越え、家の玄関を開けて安心したところで目が覚めた。
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