即興詩置き場。

2003年05月08日(木) 28.菜の花



菜の花


朝起きると腋の下や臍の中や耳の穴に
びっしりとアブラムシが付着していて
そういえば昔、菜の花だったことを思い出す

立っているしかなかった
養分を吸い取り、日の光を受け、成長しながら
外敵に為す術もなく
立っているしかなかった
そしておそらくは
生きるためにではなく摘まれるために
立っているしかなかったあの頃を思い出す

すでに日は高く
光はあの頃と同じように眩しく暖かく
アブラムシを叩き落とすためにシャワーを浴びに行く
温室のようなシーツから抜け出て
歩き始める




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