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2002年12月13日(金) 幸せな子供。

●緊張している時間が長いので、家にたどり着く頃にはぐったり。やろうと思えば幾らでも予習復習があるのだが、今夜はやすもう。6時間、寝よう、ちゃんと。

●わたしは美人じゃないが、自分の容姿を疎ましく思ったことはほとんどない。ちゃんとある程度に産んでもらっているので、あとは自分の責任だと思ってきた。
 ところが。この間、お世話になっているプロデューサーと一緒に芝居を観にいった時。そのプロデューサーと旧知の演出家の話を同席して聞いていら。
 話の最後に演出家はこう言った。
「どうせ連れてくるんならもっときれいな女連れてこいよ」

 芝居を観にいくのに「きれいな」もくそもないだろう! と、ちょっと不愉快に思ったが、別に気にはしなかった。こういう仕事をしているのに、今時こんなこと言う奴もいるんだなあ、などと逆にあきれていた。

 ところが、それを母に電話で軽い気持ちで話したらば、さあ大変。

「あんた、もうええ歳なんやから! ちゃんと手入れしてるの?」
から始まって、女はいつもきれいにしてなきゃいけないんだという、お説教とも人生訓ともつかぬ、長い長いお話が続く。
 最後には、
「ちゃんと産んでやってるんやから……」とちょっと悲しげ。

 母は娘がそんな風に言われて、すごく傷ついたのだった。わたしは母の自慢の作品なのだ。

 それから母は、たっくさんの化粧品を、なんとわたしに買い集めていたらしい。女を美しくするのは化粧品だけじゃないけれど、母はそれくらいなら力になれると思ったのだ。
 いまだに現役で働き続ける母は、毎日入念に化粧をして出かける。マニキュアだってちゃんとして。そんな母のプレゼントが、もうすぐ届くらしい。

●あまりの仕事の忙しさに、毎日、化粧をしたとしても所要時間は3分以内。寝る前も化粧水をつけるだけ。でも、そのプレゼントが届いたら、もうちょっと気にしてみようかと思う。
 母に感謝。
 産まれてくる子供は、両親を選べない。不幸な子供がたくさんいる御時世だ。そんな中、わたしはとびっきり幸せな子供だ。40歳を過ぎても、父と母の、幸せな子供。

 


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