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2003年07月19日(土) 新しいともだち。わたしの息子。

●先日読んだ三浦氏の評論の中で、柴田元幸氏が訳したスチュアート・ダイベックの「シカゴ育ち」という短篇にかなり紙数がさいてあって、わたしは既読だったのにもかかわらず、「そんなに面白い短篇だったっけ」と朝方家捜し。ようやく見つけ出したその本を開いてみると、これがとびっきりの面白さ。いや、面白いって言うより、本当に「いい」のだ。

「右翼手の死」というごくごく短い短篇などは、もう驚くべき作品。「フィールド・オブ・ドリームス」と「禁じられた遊び」と「スタンド・バイ・ミー」を足して割って凝縮して、さらにシニカルにさらにアイロニカルにさらにクールにしたような。短い文節のひとつひとつの描写力と喚起力がすごい。
 
 で、昨夜は日記を書いてからA氏に朗読して聞いてもらう。最近、この読み聞かせがわたしはお気に入り。深夜に朗読するわたしもわたしだが、ビールを飲みながら耳を澄ませているA氏もまた変わっている。で、「右翼手の死」に、二人して感動。 
 出来ればこれを全部ワープロに打ち込んで、友達みんなに配布したい気分。それほど、いい。この良さを分け合いたい。

●昼間に細々とした仕事をすませて、A家へと向かう。最寄り駅について、GOとスーパーマーケットで待ち合わせ。2週間ぶりに会うのでどんな顔で来るのかドキドキしていたが、なんだかいきなりうち解けているので嬉しくなってくる。
 相変わらず落ち着きがなくってバタバタ走り回ってはいるが、慣れないスーパーで「お肉はどこ?」「お魚は?」と訊ねるわたしをちゃんと案内してくれる。ご褒美のお菓子を一袋だけ買って、A家へ向かう。
たどり着くまでの道々、GOはご近所案内をしてくれる。「この中華屋はね……この会社はね……この交差点はちょっとおかしくってさ……次の坂が大変なんだよ……」ってな具合に、ずっと。……可愛い奴だ。

 着いてご挨拶したら、GOはいきなり「折り紙折って!」お父さんは、やおら自分の昔の写真と天眼鏡を取りいだし、「わたしがどれか分かりますか?」と、なかなか料理を始められない。今日は1学期最終日だったので、さらにGOの通知票を見たり、夏休みの計画表を見たりした後、ようやく料理開始。

 ハンバーグとアボガドと鮪のサラダ、野菜のソテーなどのメニューを作る間、はじめて使う勝手のわからない台所で戸惑うわたしに、GOは「あれはここね、それはあっちね」ときっちりお手伝いしてくれた。……可愛い奴だ。
 ちょうど出来上がる頃にA氏も帰ってきて、4人で食事。とっても賑やか。

 片づけが終わったら、GOはお部屋の片づけをする約束になっていたらしく、わたしはお手伝い。生意気盛りなので、「バイト代払うからさ、ちょっと手伝ってよ」となめたことを言う。でも、一緒にいてもらうことが、とっても嬉しそう。
 いつもは9時過ぎには寝るのに、今日は興奮していて、片づけのあと、わたしと駒でさんざん遊び、眠ったのは10時半過ぎ。
 あとでA氏と寝顔を見にいったら、口に指をくわえて眠っていた。

●子供を産み、育て、しているお母さんたちには、ごくごく当たり前な日常が、わたしにはひとつひとつが事件だ。そして、その当たり前な日常を支えているお母さんたちの苦労を、わたしはまだ何ひとつ知らない。でも、まあ、いつものごとく、当たって砕けろだ。わたしにはわたしの想像力がある。

 あさっては、GOの誕生日。A氏が仕事で遅くなるので、わたしとお父さんと二人でお祝いする。でも、プレゼントは何にするかなあ……。工作好きの彼のために、何か面白い工作キットを、明日探しにいこう。

 何より嬉しいのは、やはり、わたしが誕生日に来るよと言ったとき、飛び上がって「やったー!」と素直に喜んだこと。

●片づけをしている時に、恋人から電話がはいり、食事の誘い。今日ばかりはどうしようもない。断ると寂しげな声。……でも、この「どうしようもない」を、これから繰り返していくことになるのだろう。
 一瞬で恋人からの誘いの電話と察したA氏は心配気。でも、大丈夫だよ。わたしは、もう責任を負うことを始めたんだから。


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