夜、月を見ながら。
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昼過ぎ、文庫本の品出しをしていたら、レジのヘルプ音が聞こえたので行っ
てみるとレジ係がお客さんの問い合わせを受けていて、その後ろにもお客さ
んが待っていた。問い合わせを引き継ぐよりは僕がレジに変わりに入ったほ
うが良さそうだったので、そうすると、待ってましたとばかりに後ろのお客
さんが児童書をカウンターに置いて、お支払い態勢に。即座にその本をお預
かりして、「420円になります」と言ったところ、お客さんはなぜかお金
を出そうとしない。あれ?と思った矢先、お客さんはこんなことを言った。
「500円玉、本の上に載せておいたんだけど…」
えっ!?と思い、本を見たが500円玉は無い。レジ周りにも見当たらな
い。落としたのなら音がするはずだが、それらしき音も無かった。第一、僕
は本の上にあったはずの500円玉を見ていない。でも、見落とした可能性
もあると考え探したがやはり見つからず、結局見つけたら連絡するというこ
とになった。その後、レジ周りを入念に探したが見つからなかったので、僕
は早々にあきらめ、やりかけの品出しの続きに取り掛かることにした。で
も、店長はあきらめずずっと探していたので、ちょっと気が咎めた僕は「や
っぱありませんよね?」と声を掛けた。すると、店長が「もしかしたらエプ
ロンのポケットに入ってない?」と言ってきた。まさか…と思いながらも一
応ポケットをまさぐったところ…あった…。本の上に置かれた500円玉
は、本を持ち上げた時に滑り落ちて、なんと僕のエプロンのポケットにダイ
ビングしていたのだ。そりゃ音がしないはずである。ある意味、奇跡だが感
心している場合でもなく、すぐさま店内放送してもらって、お客さんに50
0円をお返しすることができた。あきらめなければなんとかなるもんであ
る。でも、こうして改めてみると、自分が持っていたにもかかわらず速攻で
あきらめた僕はかなり無責任な奴だなとちょっと反省中。
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