夜、月を見ながら。
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「愛」ってなんか特別で高尚な感情、って思ってしまう
ところが僕にはあるのだけれど、でもこれって錯覚だ。
というか、自分を、ひいては人間を特別で高尚な存在に
思いたいがゆえに、「愛」を数多ある感情の中から抽出
してありがたがってるだけなんだ。人間が特別な存在で
はなく、単なる動物の一種でしかないのは周知の事実。
だから「愛」にもたいした価値も意味もなく、人のもつ
単なる感情の一種でしかない。そして愛はどこにでもあ
るありふれたもの。だから、ある時、ゴキブリが現れて、
殺そうと古新聞紙を振り上げた時、もしかしたら自分の
不衛生がこいつの道を誤らせてしまったのかもしれない、
って思って躊躇したあなたの心に生まれたのは間違いな
く愛だろう。その愛はたとえ数秒ほどしか存在しなくと
も、ゴキブリ一匹の命を救うには十分だ。それでも叩き
潰されたなら、そいつは救いようのないバカだったとい
う、それだけのことだ。
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