けふの大福帳。


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2002年07月09日(火)    じっさんと"べー”

ほんとは、れいれいのごきげん5を一気に書いてくつもりだったのだけれども、あったことは都度書かなければ忘れてしまう。


きょう、じっさんとべーに出会った。


もうすっかり空が高くて、雲が白くて、そいでいて台風の気配を含んだしっとり加減の七月。
てんゆはあっついアスファルトの上を歩いていた。一本道は橋へと続く。
海へつながる河は縦横にどぶ川を渡していて、その短いどぶ川にかかる橋。

橋のたもとで「にゃぁ゛〜」と鳴いた。

立ち止まって姿を探すと、たもとの植え込みの中の、涼しそうな場所でにゃんこが寝そべっている。
(おっ、にゃんにゃだ。めんこい・・の・・)


「べーっ!!!」


突然の大声にびっくりするてんゆ。 振り返ると帽子に大門サングラス、首に手ぬぐい、ホウキとチリトリとゆー格好をなさったじっさんがいた。
(なんだなんだ、なにか怒られるようなことをしただろうか)

「べー、おら、こっち来い」

じっさんのだみ声はちょっと聞き取りづらかった。
「この猫な、べーっていうんだ」
「ほえ?この猫?」

と、額に汗するじっさんと猫を見比べる。
猫もじっさんに呼ばれると、「にゃぁ゛〜〜」返事をしながら寄ってくる。

「べーはもう十年くらい生きてる。ここに捨てられたみたいでな、首にすごい怪我して、病院行って手術してもらったんだ」

じっさんはべーの生い立ちを話して聞かせる。
てんゆは別になんも聞いてないのだけど、べーが好きだから、べーに気を止めたてんゆに話して聞かせねばと思ったのだろーか。

「見ちゃったらほっとけないでしょぉ。だから医者行ってな、もう十年生きてる」

ほんとに好きなんだなぁ。と、思う。(笑)


べーは助けてもらったじっさんが好きで、若い頃はついて歩いたそうな。

「掃きながらこの橋渡ってるとな、べーが管の上を伝ってついてくるんだ。おれぁ、あんときもうだめだぁーと思いながら、慌ててこっち戻ったんだ」

短い橋と平行に、なんのか知らないけれど、管が通っている。
その管歩いて、べーはついて来たんだって。 管はもちろんまぁるいから、足を滑らせればどぶ川にどぼんっ!となる。

「そんでおれぁ、べーに言い聞かせた。管はあぶねぇからついて来ちゃだめだぞって。そしたら渡らねぇようになった」

と、じっさんは言うのである。


「またこんどは、あっちへ用事があるときにな、歩いてついて来るんだ。あぶねぇじゃねぇか、車がたくさんで。そんでべーに言い聞かせた。通りはあぶねぇからついて来んなって。そしたらついて来なくなった」

と、じっさんは言うのである。


まったく、そのときのじっさんの胸中を思うと、おかしみを禁じ得ない。(わるいんだけど)
じっさんは青くなるほど心配して、べーを捕まえ、座らせて、こんこんとお説教したに違いない。

他にもべー若かりし頃の武勇談、木に登ったとか、スズメ食ったとか、ハト食ったとか、どぶ川にくる水鳥を獲ろうとして落ちたとか、、を聞いた。
じっさんとべーの人生は十年ちかくもかぶってるんだから、きっと一晩語り明かせそうなくらい、べーのことを知ってるんだろう。というか、話したいんだろう。


最後に

「なんでべーっていうの?」
「最初にべーって鳴いたんだ」

するとべーは、「にゃあ゛ぁ゛〜」と鳴いた。
べーもじっさんと同じく見事なだみ声だったんである。

                         <おわり>


さてさて、最後の最後だが、『じっさんは橋の上の掃除をしてくだってるのだ、ポイ捨てすんなよ!喫煙者!!』
言うまでもなく、ゴミもだ!!

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