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ほんとは、れいれいのごきげん5を一気に書いてくつもりだったのだけれども、あったことは都度書かなければ忘れてしまう。 きょう、じっさんとべーに出会った。 もうすっかり空が高くて、雲が白くて、そいでいて台風の気配を含んだしっとり加減の七月。 てんゆはあっついアスファルトの上を歩いていた。一本道は橋へと続く。 海へつながる河は縦横にどぶ川を渡していて、その短いどぶ川にかかる橋。 橋のたもとで「にゃぁ゛〜」と鳴いた。 立ち止まって姿を探すと、たもとの植え込みの中の、涼しそうな場所でにゃんこが寝そべっている。 (おっ、にゃんにゃだ。めんこい・・の・・) 「べーっ!!!」 突然の大声にびっくりするてんゆ。 振り返ると帽子に大門サングラス、首に手ぬぐい、ホウキとチリトリとゆー格好をなさったじっさんがいた。 (なんだなんだ、なにか怒られるようなことをしただろうか) 「べー、おら、こっち来い」 じっさんのだみ声はちょっと聞き取りづらかった。 「この猫な、べーっていうんだ」 「ほえ?この猫?」 と、額に汗するじっさんと猫を見比べる。 猫もじっさんに呼ばれると、「にゃぁ゛〜〜」返事をしながら寄ってくる。 「べーはもう十年くらい生きてる。ここに捨てられたみたいでな、首にすごい怪我して、病院行って手術してもらったんだ」 じっさんはべーの生い立ちを話して聞かせる。 てんゆは別になんも聞いてないのだけど、べーが好きだから、べーに気を止めたてんゆに話して聞かせねばと思ったのだろーか。 「見ちゃったらほっとけないでしょぉ。だから医者行ってな、もう十年生きてる」 ほんとに好きなんだなぁ。と、思う。(笑) べーは助けてもらったじっさんが好きで、若い頃はついて歩いたそうな。 「掃きながらこの橋渡ってるとな、べーが管の上を伝ってついてくるんだ。おれぁ、あんときもうだめだぁーと思いながら、慌ててこっち戻ったんだ」 短い橋と平行に、なんのか知らないけれど、管が通っている。 その管歩いて、べーはついて来たんだって。 管はもちろんまぁるいから、足を滑らせればどぶ川にどぼんっ!となる。 「そんでおれぁ、べーに言い聞かせた。管はあぶねぇからついて来ちゃだめだぞって。そしたら渡らねぇようになった」 と、じっさんは言うのである。 「またこんどは、あっちへ用事があるときにな、歩いてついて来るんだ。あぶねぇじゃねぇか、車がたくさんで。そんでべーに言い聞かせた。通りはあぶねぇからついて来んなって。そしたらついて来なくなった」 と、じっさんは言うのである。 まったく、そのときのじっさんの胸中を思うと、おかしみを禁じ得ない。(わるいんだけど) じっさんは青くなるほど心配して、べーを捕まえ、座らせて、こんこんとお説教したに違いない。 他にもべー若かりし頃の武勇談、木に登ったとか、スズメ食ったとか、ハト食ったとか、どぶ川にくる水鳥を獲ろうとして落ちたとか、、を聞いた。 じっさんとべーの人生は十年ちかくもかぶってるんだから、きっと一晩語り明かせそうなくらい、べーのことを知ってるんだろう。というか、話したいんだろう。 最後に 「なんでべーっていうの?」 「最初にべーって鳴いたんだ」 するとべーは、「にゃあ゛ぁ゛〜」と鳴いた。 べーもじっさんと同じく見事なだみ声だったんである。 <おわり> さてさて、最後の最後だが、『じっさんは橋の上の掃除をしてくだってるのだ、ポイ捨てすんなよ!喫煙者!!』 言うまでもなく、ゴミもだ!! |
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