月の詩
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通り過ぎてくその足音。 横顔と。 気配。 けれどもそれは。 幸福などという、 甘い響きは伴わず。 ただ、苦しい。 ただ、切ない。 『人を好きになるのは幸せなこと』と、 言えた日は遠くて。 幸福は、私から、一番遠い場所にある。
隔たりを感じ。 思いつめればつめるほどに。 裏腹に心はすすむ。 どうしてなんだろう。 認めてしまえば、 忘れられるの? この落差におびえているの。
ふと追う、その影を、 幻だとしてしまえ。 その、姿も、 その、声も、 儚い幻にしてしまえ。 そうすれば、 きっと、私は、 救われる。 苦しいだけの、 思いはしたくはないんだ。
今まで言い続けた事。 今まで考え続けた事。 それを、やっと、実感した。 目覚めた。 そうだ、人は皆独りだったのだ。 周囲に依存し、同一化しては 私はいない事と同じ。 私は私。 たった一つだ。 誰にも混ざらない。 混ざってしまえば私はいなくなってしまう。 独りという事実に、 やっと目覚める事ができた。
自分が何を望んでいるのか。 なにがしたいのか。 どうしたいのか。 嘘をつきすぎて。 もう、わからない。
ふっきったのは、 幻覚の迷路。 踏みこんだのは、 現実の迷路。
抱え込んだものを、 解き放てば、 まだ、楽になれるものを。 そう思いつつも。 抱え込んだ手足をのばせない。
誰しもみな独りだから。 ぐずぐずと思い悩む必要などない。 底をみたら、あとはもう一度、視線をあげるしかない。 上をむいたら、あとは走るしかない。 傷跡も今はなんともなく。 全て振払って。 私は私のままに生きる。
ただ、衝動にまかせただけ。 思いのほか、深くなっただけ。 ひりひりとも痛まない。 水にとけた紅はとても綺麗だと思った。 現実に立ち返れば、 隠しようも、誤魔化しようもない、傷。 わずか、えぐれた傷口は。 ささくれた心の象徴。 どこにも進めずに、 たちどまっている、 私の心。
激痛をもって、 この身体の中を、 洗い流して仕舞えれば、 そんな、ことを、思う。 ほんのささいなきっかけをもって、 手首を切り裂きたいと思う。 衝動だ。 深々と、突き抜けるほどに、 腕を刺し貫きたいと、 感じる。 その一瞬の衝動。 激痛とともに。 私が生まれかわれるような、 なんだか痛みで全てまかなえるような、 そんな気がしてしまうのだ。
空間が一息に畏縮され。 視線は距離をとびこえて。 不自然にそらす。 なんでもないふりをしたいのに。 ひとみはいつも雄弁に語る。
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