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2003年03月15日(土) 書いてもよい、今夜。

●2時間しか寝てないくせに、元気に過ごした1日。まあ、確かに朝は、5分乗る電車で立って寝て、30分乗る電車を40分寝てしまって、タクシーを飛ばし、最低の出勤だったけれども。

●きっと今夜は早く寝るのだろうと思っていたら、また0時を過ぎて、恋人と御飯とお酒。それぞれの青春期の馬鹿さわぎを、馬鹿みたいに回想して過ごす、罪のない時間。

●東大生だった恋人は、実に健全で盲滅法な、なんというか、沢木耕太郎「深夜特急」的な旅行をしたり、吉本ばなな的な純愛をしたり、仲間内で野球ゲームに明け暮れる時間を過ごしたり、回想するには悪くない青春を送っていたらしいのだが、このわたしときたら……。
 外出拒否症になって4ヶ月くらい部屋に籠もっていたり、一時期にたくさんの男の子とつきあっていたり、駆け落ちしたり、身を持ち崩したかと言われるようなバイトをしたり、まあ、不健康きわまりない青春であった。それと平行して、演劇活動を続けるなんら問題なく見える優等生のわたしもいたりして、まあ、なんだか、訳のわからない人間だった。そんなこんなを思い出せば、よくまあ、そこそこ筋の通った人となりに、なれたものだと思う。

●生まれてきたからには、いつだかはわからない死んでしまう日まで、生きていかなきゃならないわけで、その時間をどう過ごすかを、真剣に考え、立ち向かっていける自分を、とりあえず今現在のわたしは、持っている。このわたしを作ってくれたのは、たった二人の父と母であり、たくさんの他者であり、たくさんの他者が贈ってくれた芸術作品だ。文学やら映画やら絵画やらに、どれだけ救われてきたか。その恩恵でここまで生き延びてきたからこそ、ここまで日々を謳歌できたからこそ、これからは、自分が創って発信するのだと思っている。

●今書いているEnpituという日記では、どういうリンクをたどってこの頁が読まれているのかを知ることが出来る。
 この1ヶ月、「パワーハラスメント」を検索してここを訪れる人が、毎日必ずいる。一気に20人、なんて日も。
 何気なく書いていることが、そんな風に読まれるということに、ちょっとした危惧を覚える。3日に1度は、酔っぱらって書いてるしなあ。
 極力、検索にひっかからないように、実名をことごとく避けて書いているし、友人にも仲間にも、アドレスを教えないで書いている。記録として読んだ本を付していくことで検索にひっかかることを知って、一時はその習慣をやめたりもした。
 でも。ろくなことは書いていなくても、嘘は書かない。まあ、それだけが取り柄ではある。その日その日において、嘘じゃないことを書いている。だから開き直って、誰が訪ねてきても怖くない、と、読んだ本を付す習慣も取り戻した。
 鈴木真砂女さんが亡くなったことを知り、彼女が俳句ということばの形式と共に生きていなかったらと想像し、胸が詰まった。
 文才にたけていなくても、ことばを知らなくても、やはり、書くこと読むことで自分を鼓舞したり救ったりしていける人の部類に、わたしは属しているのだと思う。 

●明日はひとまず千穐楽。


2003年03月14日(金) 書いてる場合じゃないらしい。●ぶらんこのり(いしいしんじ)●武蔵丸(車谷長吉)

●恋人と、遅い食事を摂り、グラスを傾け続けた結果、午前6時の帰宅。明日は8時起きなんだけれど。マチソワなんだけれど。
 4時間くらい、ほとんど喧嘩腰に、仕事と、夢と、こうして生きてることについて語っていた。彼は非常に正しく論理的に、わたしは感情的にふらふら言い逃れしながら。

●あなたの、ことばになってない部分も、不遜ではあるが理解している、だから、今は静かに寝て、明日に備えてくれという、恋人からの忠告(進言)電話がかかる。

●今日は、書きたいことがたくさんあったのにな。でも、きっと寝た方がいい。はあ……。こんな夜もある。
 今日、いっぱい書くんだったら、「ちっぽけな神様」というタイトルだった。久しぶりに書きたいことを頭につらつらと思い描く夜だった。明日、それを書くだろうか? それとも、明日になったら、書かなくってもいいことになってるんだろうか?
 とにかく、今は、書いてる場合じゃないらしい。仕事をしている人として。おとなしく、寝る。寝れるのか?


2003年03月13日(木) ご褒美の水。

●何やら落ち着かぬ日々。仕事でも、私生活でも。

●前の仕事でご一緒した女優さんが先日、現在の公演を観にきてくれて、今日、実に感動的な「感動しましたメール」を受け取った。
 感動したことを伝えて、逆にわたしが感動してしまう、温かい文章。ありがたかった。
 女優としては抜群の才能、でも人見知りが激しく、「使いにくい」と敬遠されることもある彼女。いやいや、わたしにとっては、「自分は一人で闘っている」のだということを知っており、「自分を愛する」ことを知っている、素敵な人だ。誰からも愛されようとする女優より、よほどわたしには潔く思える。そういう人が本当に感動してくれる時、作った者の方も感動できるものだ。

●膨大な「紙葉の家」をちょっと置いておいて、ネットの本屋から届いた、いしいしんじ氏の処女長編を、朝から読みはじめる。たぶん、今夜中に読み終えるだろう。
「まさに今求めるタイプの本に、その時その時巡りあってしまう」というのは、幼い頃からずっと本好きでいたわたしへの、神様のご褒美だろうか?
 いしい氏の語るものがたりは、乾いたわたしの精神に、きらきらと陽に光る清新な水を、ひたひたと注いでくれるようだ。
 帰りの電車の中で読みふけり、涙がこぼれて、サングラスをかけて隠した。いらぬ涙を廃棄して、きれいな水を自分の内に新しくたたえたい。


2003年03月12日(水) 白か、赤か。

●23日にロンドンに渡る予定になっているのだが、この世界情勢では、何があるかわからない。
 ロシアでチチェンのテロ事件にでくわした時も思ったことだけれど、平時に感じる芸術の影響力は、非常時になると、実に脆い。たったこれだけのものだったのかと思うほど。

●今、上演中の舞台は、傷ついた旅芸人たちが集まって、荒唐無稽な幸福の物語を演じてみせるという、大枠を持つ。不幸なことばっかりの時代に、夢見る権利ぐらいはあるだろう、と、演じてみせるのだ。
 プロローグでは五体不満足な旅芸人たちが演劇という救済を求めて集まってき、エピローグには、演じ終えてまた何処かしらへ帰っていく。
 現演出では、ラストシーン、真っ白な照明の中を彼らは帰っていくのだけれど、これを、開戦したら、真っ赤な照明に変える予定になっている。

 わたしは、上演中の舞台を、とっても愛しているが、その演出プランには、密かに反対している。そういう即時的なことに耐える、精神力がないからだろうか? それとも、自分の体を通過していない痛み、自分の想像力を越えた痛みを、人に提示する勇気がないからだろうか?

 白が、赤になるだけのこと。それも、虚構の舞台の上で。
 でも、そこにわたしの人生が確かにあるので、どうしても納得できない。

●日本での公演も、あと4日、5回限りとなった。16日までだから、ニュースで見聞きする限り、たぶん、それまでに開戦することはないだろう。でも、ロンドン公演では……。

●明日は午後からの出勤。また物語の世界にたっぷり逃避行して眠ろう。

 


2003年03月11日(火) 想像力!

●性善説とか、性悪説とか、まあ、いろいろ言い方はあるだろうが、人は生まれてきた以上、ある程度、同じような感受性というものを持ち合わせている。
 ほんの小さな社会をのぞいてみても、その感受の力のある部分が麻痺していたり、麻痺させていたりする人がいて、それが社会のぶれや損失を招くことが多い。もちろん、ある部分を麻痺させなければ生きていけない、或いは生き抜けない社会が存在するから起こることなのだろうが、それこそが、実際、諸悪の根源であることが多いと、わたしは常々思っている。
 自分が自分であるために、生きるために施す最低限の自己弁護が、パーマネントに持っている感受性を、損なっていく。

●2次大戦を経て、この現代に戦争を興すということは、マスになって、ある感受性を麻痺させることにほかならない。
 人が二人寄ってできるいちばん小さな社会をとってみても、その罪は明らかであるのに、それがどうして、国家レベルにまで発展するのか。
 知性が無さ過ぎる。どう考えても。いくら新聞を読み、学者や政治家の解説を聞き、しても、わたしには、そう思える。そういう風にしか思えない。

●想像力! 想像力! 想像力!


2003年03月10日(月) 無為の1日。

●花粉症の症状ひどく、お休みの1日を無為に過ごす。
 ほんのわずかな時間仕事をし、ほんの少し部屋を片づけ、ただぼうっと。
 
●「紙葉の家」という長尺の小説(というより、読み物か?)を読みはじめた。


2003年03月09日(日) 制御できない感情。恋。

●世界を揺るがす戦争が今にも始まろうとしているこの時に、わたしは、たった一人の自分の恋人のことで、頭がいっぱいだ。

●わたしが恋人と呼んでいる人は、妻帯者だ。彼の奥さんは、自分の仕事を模索するために、現在パリに住んでいる。つまりは別居中だ。そして、彼はこの9月から、国費在外研修でパリに赴く。
 妻帯者であるという事実を棚上げにして、わたしの一番のパートナーとして生きていた人が、また奥さんの元に戻るわけだ。

 彼は彼で、自分の仕事を模索しにいくわけであり、それがたまたま、夫婦してパリであったというだけのこと。ただ、彼らはまた一緒に暮らし始める。

●自分の中に生まれる様々な感情の中で、わたしは特に「嫉妬」という感情を憎んでいる。どうしても、みっともないものとしか思えないからだ。それが自分の中に生まれようとしている今、なんとか理屈をつけて、なんとか自分を制御して、「嫉妬しない」自分を見つけようとしている。
 今、わざわざ「嫉妬」の虜となって苦しむよりも、彼の人生とわたしの人生が再びクロスする時間を、人としてちゃんと生きつつ、ひたすらに待っていたい。
 でも、それができない。そんなに簡単なことじゃない。

●自分の人生の空き時間を、たくさんの男たちと暮らしてきた。たくさんの人を自分勝手に傷つけてきた。20代30代なんて、とっかえひっかえだった。でも、さらに自分勝手に言えば、本当の恋は二つしかない。ひとつはもう終わってしまったもの。ひとつが、現在の恋だ。

●17日にも開戦かと告げる新聞を読みながら、わたしは自分の恋のことをひたすら考える。そして目の前には、果たさねばならない仕事がある。

 明日は休演日。こんなに心が乱れている時に、訳知り顔に仕事をしなくてすむのは、ありがたい。


2003年03月08日(土) 偶然の産物としての、わたし。●愛のつづき(イアン・マキューアン)

●ああ、やっと家に帰れた。
 あんまりにお腹が空いているので、恋人と行きつけの飲み屋に着いたのが、もう1時過ぎ。(太るよな、そんな時間の夕食なんて)
 ビールと、お総菜めいたつまみと、御飯をもらって、頬張る、頬張る。おなかも一杯になったところで、幸せに帰るつもりが。
 そこへ、恋人がよく一緒に仕事をするスタッフ仲間がふらりと現れ。

●お酒を飲んで面倒くさくなる人って、たくさんいる。
 その要因を、わたしは、かなりおおざっぱに、こう見てる。

 ひとつは、自分を愛しすぎている人。つまりは、自分を基準にしてしか世界を見れない人。
 もうひとつは、自分の愛し方を知らない人。つまりは、人に対しても、自分に対しても、ストレスのたまりやすい人。

 わたしはお酒を飲んで、酒に負けて翌日ギブアッップすることはあっても、絶対人にからんだり迷惑をかけたりしない。だって、お酒様に失礼だもの。

 まあ、なんだか、からみ酒する人とたまたま同席してしまって、自分の眠りをちょっと減らしてしまった夜。

 それでも。

 いつもなら、恋人と幸せに御飯を食べて、お酒を飲んで、分かれる、といった日常が、ちょっとした偶然で違う展開を見せるっていうのは、そんなに捨てたもんじゃない。

 わたしが現在の恋人に会えたのも、偶然のなせる技。すべては、こうした毎日の偶然から発することに、私自身の明日がある。

 物語はこうして作られるんだな、と、過去を振り返って納得してしまうくらい、今のわたしは偶然の産物なのだ。もう20年つきあっている演出家との出会いだって、言ってみれば、偶然。

 必然なんてことばは、死ぬ時にようやく分かることなのかもしれない。現在のわたしは、本当に、偶然に偶然が重なって、あり得た、わたしなのだ。
 


 


2003年03月07日(金) すし詰め終電車内で思う。

●仕事で疲れたところに、JRの人身事故。都内に向かう電車は一向に動く気配を見せず、大宮方面に逆行してから大回りして帰る。都内にたどり着いてからも、終電ぎりぎりで、駅まで走る、走る。着いてみると、JRの接続待ちで、私鉄もさんざんに遅れ、しかも超満員。ひどいすし詰め。
 まわりの乗客たちが気長に構えているのを励みに、読みかけの本を開いてじっと耐え、家に着いたら、もう1時半を過ぎている。

●小さい頃、大人っていうのはいつも「坐りたがる」人種だと思っていた。今や、電車に乗ると、まず空席を探す自分がいるのが淋しい。眠りが足らないので、わずかでも眠りたかったり、いつも重い荷物を抱えていることが辛かったり。実際とっても疲れていたり。
 年輩の人などに席を譲るくらいのことはすぐに出来るけれど、そういうことがなかったら、やっぱり坐っちゃうなあ、今のわたしは。
 そういう自分を、ちょっとずつ認めてやるのも大事。ちょっと意地を張って疲れた大人になることを拒むのも大事。
 問題は、バランス感覚だな。そんなことを、満員電車の中で考えたりする。


2003年03月06日(木) なんだか調子がいい。

●酔っぱらって、日記を書いて、本を読んで、寝たのは午前4時。演出家からの電話で12時に目ざめるまで、8時間たっぷり眠った。眠って起きると、なんだか気持ちがやけにすっきりしていて、肉体と精神の蘇生力にちょっと感動。そう言えば、こうやって毎日毎日を暮らしてきたのだな、今までも。

●眠ったせいか、薬を前もって飲んでいたせいか、このところわたしを苦しめている花粉症の症状が1日ぱったりと消える。心と体の調子がいいと、行動にずいぶん余裕が出てくる。

●明日も、午後までは自由な時間。少し仕事して、少し本を読もう。

(久しぶりにHPのEtceteraを更新。)


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