便蛇民の裏庭
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ぼくは小さい頃、 母に連れられて盛り場にいることが多かった。
大人しかいないところに子供がいる、という不自然さ。 ただそれだけでみんなは声をかけてくる。
キャバレーに連れて行かれると 周りの客から果物の盛り合わせなどが届いた。
ホステスさんにもよくかまわれた。
母が働くキャバレーに連れて行かれたとき
「私にも同じくらいの子がいるのよ、 もうずっと会ってないけど」
と、ぼくを抱きしめたお姉さんがいた。
お姉さんから届けられた イチゴが山ほど盛られたお皿に コンデンスミルクがたくさんかかっていたのを 今でもよく覚えてる。
昨日、ぼくは子連れで母とのデートに出かけた。
ぼくが連れまわされたような真夜中な訳ではないのに 「わぁ!こどもだぁ!」 とさわがれるお子達。
ビラ配りのお兄さんにカイグリカイグリされ 取りすがりのおねいちゃんたちにバイバイされ お子というだけで何処に行っても可愛いといわれ 店員さんにお菓子をもらう。
つかの間の人気者になったお子はすっかりイイ気分。
通り過ぎる大人たちは少しだけ飲んでイイ気分な時間帯。 『年はいくつ?』『名前は?』などと声をかける。 上の子は元気に、下の子ははにかんで答える。
帰りの交通機関の中でも興奮が冷めない。
「楽しかったね!」 「うん、楽しかったね」 「またいこうね!ね?」 「うん、そうだね」
まるで遊園地か動物園帰りのような子供の姿。 ほほえましげに見つめる人もいる。
「オレ、スス○ノだぁーいスキ!」
見つめていたおば様の顔は一瞬凍った。
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