Sotto voce
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世間様で『父の愛人』と噂される女性がいる。
もう母とは離婚秒読みだし、父がその人といることで落ち着くのなら、
黙って成り行きを見守ろうと思っていた。
でも、他の女性ならともかく、なんでこの人なんだろうと思う。
とにかく私の嫌いなタイプなのだ。
妙に化粧が濃くて香水の香りがきつい、田舎にはそういないけばさ。
頼みもしないのにうちの親子関係に割り込んでくる無神経さ。
そして今日、決定的な出来事が。
今日、親父はお友達の家族と食事会に出て行った。 私は家にいたのだが、いわゆる『ワン切り』電話がかかってくる。
たまたま電話をとると、何もいわずに切ってしまう。
電話の子機には電話番号が表記されないので、茶の間に行って
親機の前に座って電話が来るのを待ってみた。
そしてかかってきた電話。
私がとるとすぐ切れてしまう電話。
画面を見ると、あの女性の家の電話番号だった。
おそらく、父の所在を確認するために電話したのだろう。
あからさまに不愉快な気持ちになった。
やっぱり、この女が大嫌いだと思った。
父が母と離婚し、再婚するならそれでもかまわない。
でも、この女と再婚するのだけはどうしても許さない。
彼女に対する不信感がぬぐえない限り、なんとしてでもそれだけは阻止する。
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