リトル・タイムトリップ


2002年06月17日(月)
「葉桜の日」(鷺沢萠)を読了。
収められていた2作品は、どちらも似たようなテーマ。
「自分は誰なんだろう…」「自分はなんでここにいるんだろう」
誰しも一度は考えるテーマを、ストーリーが重くなく書いていて、
何か叙情的な物が残る。不思議な感じ。

もともと、鷺沢さんの作品は好きなので
多少の脚色のある感想になってしまうかもしれない。
あと、思い入れの原因がもう一つ。
鷺沢さんの作品(特に初期作品…?)は、
自分のすむ街が舞台になる事がよくあって、
読んでいるうちに、「マリナード」であったり「明治屋」であったり。
場所がわかってしまうようなことがしばしば。
今回読んだ作品も、ご多分に漏れず。
だから、贔屓目になってしまうのかも...ご勘弁を(汗)

この作品、鷺沢さんが書かれたのが1989〜90年、
(当時まだ20〜21歳で芥川賞・三島賞の選考に上がるのだから、すごい力量…)
当時、自分は10歳くらい。
小説の中で描かれる市の中心部の風景は、
きっと当時の自分の目には映らなかったもの。
もちろん小説にあったものがその当時実在したかというと、
多少の誇張とかが混じっている事はあると思う。
けど、小説のベースとして、時に実在の地名を使ってまで描かれているという事は、
少なくともこの街にはそんな雰囲気を感じさせる「何か」があったのだろう。

作品が書かれてから12年。
自分は主人公の年齢を通り越したけど、
一方で、小説に描かれてるような世界は存在が薄くなったように感じる。
それとも、それは、まだ自分が当時映らなかったものを
十分に見ることができていないからだろうか?
だとしたら、それは自分に問題があるということになるのだろうけど。



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