それが、祖父に残された時間。
癌になった祖父は、既に抗癌剤が投与出来ない程の容態だった。 元々、抗癌剤なんて投与する気は無かったけれど。 入院先の病院を、祖父はいたく気に入っていた。 でもそこは外科病棟だから、化学治療を受けなければ入院し続ける事は出来ない場所だった。 だから祖父は、化学治療をすることを望んだ。 しかしそれは叶えられなくなった。 その結果、祖父は転院し、病による痛みを和らげて安らかな最期を待つという、緩和療法という処置を受けることになった。
あと、数ヶ月。 己の死が間近に迫っていることを知りながら、 これからの一日一日を、祖父は何を考えながら過ごすのだろう。
私に出来るのは、家族の負担が少しでも減るように 昔のように、『元気な良い子』になる事だけ。 例え、それが演技であったとしても。 家族に心配をかけないように。皆が安心してくれるように。 せめて今の間だけでも、普通の高校生に戻っていられますように。 学校に行って。友達と笑って。受験に悩んで。 そんな普通の高校生活を送れますように。
大学に行けば、一人で悩める。 どうかどうか、何処かの大学に進めますように。
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