名前は伏せるけれど、見ている貴方はきっと気付くだろうね。 でも、この手紙は単なる私の自己満足だから。 貴方は何も気にかけないで。自分の道だけ見ていて。 …もし叶うなら、嫌悪の念すら抱かずにいてくれれば、嬉しい。
私の歩んできた道はあまりにも平坦だったから、 貴方の苦悩はきっと半分も理解出来ないと思う。 話を聴いて、それだけで全てを理解したと思い込んでしまえば その行為は、きっと貴方に対する侮辱にしかならないと思うから。
先生と、貴方の声。 確かに何かを話しているのに、内容が全く聴き取れないそれを 大して離れてもいない距離で、私は無心で聴いていました。 その時の私は本当に心が無かった。何も頭に入らなかった。 動くことすらも億劫で、ただその場に“居る”だけでした。 ただ一つだけ理解出来たのは、すぐそこで貴方が苦しんでいること。 真っ暗な頭の中で、それだけがずっと響いていました。
貴方のことを何も知らないのだから、そんな気遣いは迷惑なだけなのにね。 何も出来ないと解っていながら、酷く歯がゆくて仕方がなかった。
でも、何も出来ないくせに、貴方に自分勝手なことを訊きたかった。
私は、貴方を、友達だと思っても良いですか。
貴方は、私を、友達だと思ってくれますか。
何の役にも立てないのに、そんなことを訊きたかった。 何も出来ないと解っているのに、何かがしたかった。 その『何かが出来る地位』に立ちたいって、思ったんだ。
私が目の前に現れない方が、貴方が笑えるのならそう言って。 自分を殺してでも、貴方が笑ってくれた方が良いって、私は思うから。
貴方と私が少しだけ話せた時、貴方は随分と自身を過小評価していたけど 貴方の何かを否定出来る人は、滅多に居ないと思うよ。 だからもっと、自信を持って笑って下さい。 …貴方を苦しめるものが、少しでも減りますように。
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