◎ ともだち。 ◎

名前は伏せるけれど、見ている貴方はきっと気付くだろうね。
でも、この手紙は単なる私の自己満足だから。
貴方は何も気にかけないで。自分の道だけ見ていて。
…もし叶うなら、嫌悪の念すら抱かずにいてくれれば、嬉しい。

私の歩んできた道はあまりにも平坦だったから、
貴方の苦悩はきっと半分も理解出来ないと思う。
話を聴いて、それだけで全てを理解したと思い込んでしまえば
その行為は、きっと貴方に対する侮辱にしかならないと思うから。

先生と、貴方の声。
確かに何かを話しているのに、内容が全く聴き取れないそれを
大して離れてもいない距離で、私は無心で聴いていました。
その時の私は本当に心が無かった。何も頭に入らなかった。
動くことすらも億劫で、ただその場に“居る”だけでした。
ただ一つだけ理解出来たのは、すぐそこで貴方が苦しんでいること。
真っ暗な頭の中で、それだけがずっと響いていました。

貴方のことを何も知らないのだから、そんな気遣いは迷惑なだけなのにね。
何も出来ないと解っていながら、酷く歯がゆくて仕方がなかった。

でも、何も出来ないくせに、貴方に自分勝手なことを訊きたかった。


私は、貴方を、友達だと思っても良いですか。

貴方は、私を、友達だと思ってくれますか。


何の役にも立てないのに、そんなことを訊きたかった。
何も出来ないと解っているのに、何かがしたかった。
その『何かが出来る地位』に立ちたいって、思ったんだ。

私が目の前に現れない方が、貴方が笑えるのならそう言って。
自分を殺してでも、貴方が笑ってくれた方が良いって、私は思うから。

貴方と私が少しだけ話せた時、貴方は随分と自身を過小評価していたけど
貴方の何かを否定出来る人は、滅多に居ないと思うよ。
だからもっと、自信を持って笑って下さい。
…貴方を苦しめるものが、少しでも減りますように。

   − 2005年11月01日(火) −

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