あの頃の自分には勝てない。 素直に、そう思う。
あの頃の自分は 今よりも弱くて 今よりも脆くて 今よりも孤立していた筈なのに あの頃の言葉は、透明だった。
己の言葉の拙さに落胆して 他人の笑顔が胸に染みて痛くて ぶつけどころのない苦しさにもがいて そんな、毎日だったのに。
今の笑顔より、あの頃の涙の方が価値があるんだろうか。 今の私より、あの頃の私の方が認めてもらえるんだろうか。
偽って太陽の下で笑う私より、 素直に月の下で全てを睨んだ私の方が。
全てを投げ捨てた振りをして手を差し伸べる私より、 感情のままに刃を握り締め続けていた私の方が。
少なくとも、多分私は、今よりも昔の私の言葉の方が好きだ。 独りよがりで、排他的で、炎の上に厚い氷で蓋をしたような言葉。 冷たいくせに感情的で、乱暴で。 “大人”になれば、きっともう二度と生み出せないであろう言葉達。
土を払って、埃も払えば、もう一度息を吹き返してくれるかな。 あの頃の私は、もう一度答えてくれるかな。
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