◎ くらべる。 ◎

あの頃の自分には勝てない。
素直に、そう思う。

あの頃の自分は
今よりも弱くて
今よりも脆くて
今よりも孤立していた筈なのに
あの頃の言葉は、透明だった。

己の言葉の拙さに落胆して
他人の笑顔が胸に染みて痛くて
ぶつけどころのない苦しさにもがいて
そんな、毎日だったのに。

今の笑顔より、あの頃の涙の方が価値があるんだろうか。
今の私より、あの頃の私の方が認めてもらえるんだろうか。

偽って太陽の下で笑う私より、
素直に月の下で全てを睨んだ私の方が。

全てを投げ捨てた振りをして手を差し伸べる私より、
感情のままに刃を握り締め続けていた私の方が。

少なくとも、多分私は、今よりも昔の私の言葉の方が好きだ。
独りよがりで、排他的で、炎の上に厚い氷で蓋をしたような言葉。
冷たいくせに感情的で、乱暴で。
“大人”になれば、きっともう二度と生み出せないであろう言葉達。

土を払って、埃も払えば、もう一度息を吹き返してくれるかな。
あの頃の私は、もう一度答えてくれるかな。

   − 2005年12月23日(金) −

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