◎ よいこ。 ◎

昨日から保育園で職場体験をやらせてもらっています。
今日は4歳児のクラス・うめ組へ行きました。
そこに、『ろかちゃん』という女の子がいました。

ろかちゃんは、とにかくずっと笑顔の女の子でした。
大きな声で話す時にも、ひそひそ声で話す時にも、にこにこしています。
一人の男の子が「せんせい(私のこと)、ろかちゃんとにてる」と言いました。
何のことかと思えば顔のことだったらしく、確かにその子が言う通り、
ろかちゃんは鼻の形や肌の色が私とそっくりでした。

でも、一日仲良くしてもらっていて思いました。
ろかちゃんは顔だけでなく、性格も私と似ていました。

他の子は、私と手を繋いでいる時にその手を他の子に取られてしまうと
「わりこみしないでよー!」と必死で議論し、喧嘩になります。
でも、ろかちゃんは、とても寂しそうな顔をしながらも、
割り込んできた子を払うことができずに後ろに下がってしまうのです。
自分のタオルをくるくると巻いて遊んでいても、
他の子が「それかして!」といってしつこく食い下がると、
自分が遊び終わっていないにも関わらず、最後にはタオルを貸してしまいます。

日本人の典型ですよね。
自分が嫌なことがあっても、「いや」って言えないんです。

そんなろかちゃんが、昼に遊んでいた時に泣きました。
他の子が「せんせい、あっちであそぼう」と言ってオルガンの横へと
私を引っ張っていこうとした時に、「せんせい、ここにいて」と言って
私にぎゅっとしがみついてきたのです。

ずっと笑っていたろかちゃんが泣いた。

私は取りあえず、「あっちにいこう」と誘ってきた子達に
「ちょっとろかちゃんとお話したいから、先に行っててね」と言って
ろかちゃんと正面から向き合って、手を握って、話をしました。

「ろかちゃんはとっても優しいんだよね。
 いつも自分のことより、お友達のことを考えるんだね。
 だからさっきもお友達にタオル貸したんだよね。
 先生、ろかちゃんのことは全部大好きだよ。
 でも、笑ってるろかちゃんが一番好き」

そんな話をすると、ろかちゃんはうんうんと頷いて聞いてくれました。
そしてその後、少しだけその場で遊ぶと、ろかちゃんは皆と一緒に
オルガンの横で遊ぶことを許してくれて、一緒に遊びました。

小さい頃の私が、当時の先生に言ってもらえたら、きっと嬉しかったこと。
小さい頃の私が、当時の先生に言ってもらえて、凄く嬉しかったこと。
それを考えて言っただけだったけれど、
やっぱりろかちゃんと私は似ているらしくて、とても喜んでくれました。

「せんせい、ろかね、きょうのおひるがすっごくたのしかった!」

おやつを食べた後に手を洗って、ろかちゃんはそう言ってくれました。
繋いだ手をぶんぶんと大きく振って、喜びを表してくれました。

私が幼稚園に通っていた時には、そんな言葉を言えただろうか。
私の目指している“保育士像”に近付けた気がして、とても嬉しかった。

私は子ども達に『優しい子』とは言っても、『良い子』とは言いません。
何かの本に書いてあったのですが、大人の示す『良い子』というのは
『聞き分けのある子』『手間のかからない子』であって、
そんな大人にとっての『良い子』を目指す『優しい子』は、
いつかきっと、どこかで躓いてしまうらしいのです。
だから私も、『良い子』という言葉は子ども達に使わないことにしました。
大きくなってから苦しむよりも、小さい頃に沢山甘えて
歳相応に周りに迷惑をかけてくれる方が、その子には良いと思うから。

   - 2005年12月27日(火) -

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