『なぁ、かぁちゃん。おつきさんひとぉつ、欲しいなぁ。』
まぁちゃんが言いました。
『そんなん言うたかて、まぁちゃん、おつきさんがどんな大きさか知ってんのん?』
りんごを剥きながら、かぁちゃんが聞きました。
『知ってるよ!まぁちゃんの手のひらにちょうど乗るんや!毎日毎日、比べてんもん!』 まぁちゃんは手をかざします。
『…じゃあ、おつきさんもろて、まぁちゃんはどうすんのん?』
かぁちゃんはまた聞きました。
『ブロォチにすんねん!三日月のブロォチ!まぁちゃんだけのブロォチや!』
まぁちゃんが笑います。
『そうか、ブロォチか。まぁちゃん、おしゃれさんやなぁ。』
かぁちゃんはにこにこ笑顔です。
『せやし、まぁちゃんは、おつきさんひとぉつ、欲しいねん。』
まぁちゃんは言いました。
それは、病院のベッドから見えた、たった一つの宝石でした。
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