もう何年も前からずっと探している絵がある。

その絵は今は大崎にある「ナノハナ」が
未だ「菜の花」の看板を出して渋谷ＯＳ劇場の前にあった頃、
イベントの日にお店に置いてあった雑誌に載っていた。

タトゥーか何かのイベントであったと思うのだが。
そしてタトゥー関連の雑誌であったと思うのだが。

日本の雑誌だったか海外の雑誌だったか、
それすらも憶えていないけれど、
カウンターに腰掛けて店内の薄明るい照明の下、
テキーラを呑みながら何の気ナシにぱらぱらと頁を捲っていたのだと思う。


思う。
思う。
思う。
思うばかりで記憶は定かではない。

呑んでいたのも
もしかしたら「グラスホッパー・モドキ」であったかもしれない。
あるいは「アマレット・ジンジャー」であったかも。


そんな記憶しかないけれど、
その時に見つけたアリスとウサギの絵を、私は今も探している。



画家の名前も分からない。
間違いなく、酔っていたからなのであろう、すっかりと忘れてしまった。
かろうじて絵のタイトルだけ。

『お礼をするアリス』というその絵の中で、
背の高い白ウサギは小さなアリスを抱え上げ静かに彼女と繋がっていた。



あれから、思い出す毎に探している。
ネットで。
書店で。
ギャラリーで。



幾月か前、下北沢のとある雑貨屋で似た様な画風の絵を見つけた。

その人なのかどうか、まだ分からないけれど。

追いかけてみたら。
ついて行ったら。
もしかしたら手が届くのかもしれない。




果たして私はアリスに出会えるだろうか。


白ウサギはまだ、あらわれない。