今日の日経を題材に法律問題をコメント

2003年05月20日(火) 裁判は三審制ではなく、二審制である

 日経(H15.5.20付)1面に、川辺川ダム訴訟で、敗訴した国側が上告を断念したと報じていた。


 小学校の教科書で、裁判制度は三審であり、それにより裁判の適正さを保障すると習った気がする。

 しかし、ほとんどの裁判は高等裁判所の段階で終了する。


 というのは、法律によって最高裁に上告できる場合を制限しているからである。


 すなわち、憲法違反など一定の理由がないと上告できないのである。

 また、法令解釈が重要になる場合には、上告受理を申し立てることができ、受理されれば上告したのと同様になる(つまり、上告と、上告受理との二本立てになっている)。


 新聞では、法令違反がないと上告できないと書いていたが、法令違反があれば当然に上告できるわけではないので、記事は正確ではない。



 このようなことから、適法な上告理由や上告受理申し立て理由がないのに上告しても場合は、上告が認められない。


 
 川辺川ダム訴訟では、二審の判決は、誰が同意したかという事実認定の問題であったため、適法な上告理由や上告受理申し立て理由はなかったため、国側は最高裁で争うことを断念したのである。


 もっとも、一般人であれば、ダメもとで上告することもありえるが、国がダメもとで上告や上告受理申し立てをするわけにはいかないであろう。



 このように上告できる理由を制限しているのは、最高裁の審理が非常に過重になっていることから、事件数を減らし、重要な事件だけに勢力を注ぐようにするためである。


 ということで、実際はほとんどの裁判は三審ではなく、二審で終わるのである。


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