2003年12月17日(水) |
日米で、特許侵害について判断が分かれた |
日経(H15.12.17付)社会面に、特許訴訟の模擬裁判を、日本の裁判方式と、アメリカの裁判方式(陪審制)とで行ったところ、結論が分かれたという記事が載っていた。
裁判の内容は、採決用注射器に仕込む、血液凝固を防ぐ物質を少量にする技術について、原告は、物質を凍結させて注射器に入れるが、被告は、注射器内に液体を入れて凍結させるものであり、それが特許侵害にあたるかというものである。
日本方式では、凍結させて注射器に入れるか、注射器に入れて凍結させるかという順番が特許の本質部分であるとし、技術が異なるから特許侵害はないと判断した。
これに対し、アメリカ方式(陪審制)では、順番の違いで何が異なるか分からなかったとして、特許侵害を認めた。
この模擬裁判は東京地裁と早稲田大学共催で、現役の裁判官が参加している本格的なものである。
その中で結論が分かれたのだから、興味深い。
このように結論が分かれた背景には次のような価値観の違いがあるように思う。
特許を広く認めると、ライバル会社などが技術改良して競争する余地はなくなる。
それは技術の進歩を妨げるだろう。
このケースでいえば、物質を凍結させて注射器に入れる技術に対し、注射器の中で凍結させた方が技術的に簡単で優れているかもしれない。
それを単なる物まねと見るか、技術の進歩と見るか。
そういった価値観の違いが、前述の模擬裁判の結論の違いとして現れたように思う。
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