あまいせいかつ

2002年01月08日(火) お見舞い

入院患者がもらってうれしい贈り物は、花でもなく食べ物でもなく、手紙であるという記事を読んだアタシは、親戚の人のお見舞いに姪ふたりの手紙をもっていくことにした。
彼は、30代でありながら長期の入院をしていて、退院のめどはたっていない。
アタシは姪ふたりに画用紙を渡し、お見舞い用の絵を書いてもらうことにした。
姪姉妹のうち、姉は子供ながらに、まわりの空気を読むことに卓越した才能を持っている。
「おじさんを励ますような絵にしてね〜。」
というアタシの言葉を充分理解してくれたようだ。
フリルのドレスをきた女の子のまわりに薔薇やひまわりの明るい花が咲いている絵には、「早く良くなってね。おじさん。」の1言も忘れていない。
なかなか良い出来だわ。
安心して、妹の作品に目を向けると…。
アタシは驚愕のあまり凝固した。
暗闇の病室にぐったりした人の絵が書かれていたからである。
「ねーねー?もっと明るい絵にしない(汗)?」
「だってー 病院でのおじちゃんの絵を書くんだもーん。」
「じゃあさ、昼間の絵にしない?(大汗)」
「だってー 寝るのは夜の方がいいってセンセイが言ってたよ。」
「じゃ・・じゃあさ、起きあがってるところはどお?」
「だってー 病院は寝るところでしょ?
寝ないとお病気なおらないんだよ?
るかちゃん、大人なのに知らないの?」
「じゃ・・じゃあさ、もう1枚違うの書かない?」
「やだー。もう、つかれちゃったもーん。」
あっさり拒絶され、近所の公園に逃げられてしまった。
困ったなあと思いつつも、お見舞いの日にちがせまっていたのでそのまま袋にいれて持っていってしまった。
子供のすることだから、彼もきっと許してくれるだろう。

しかしながら、アタシの予想はマッタクはずれた。
彼が喜んでくれたのは、妹の作品の方だったからだ。
ユーモアがあって面白いと爆笑する彼を見ながら、
長生きのしすぎで、つい人のウケをとろうとしてしまう自分を恥ずかしく思う。
こんなに、うれしそうに笑う彼をみるのは入院以来はじめてかもしれない。
「お見舞いも色々もらったけどさー、こんなに笑ったのはじめて。うれしいねー。」
そして、それがアタシが聞いた彼の最後の言葉になってしまった。


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