
どうなっているの? こうなっているの
せいら
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| 2008年07月27日(日) ■ |
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| 重力ピエロ |
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今年読んだ本の中ではダントツに面白かった!! 最近一度読んだだけという読み捨てが多いんですけど、この本は自分でも購入し何度も読み返したいと思わせる本でしたね。
ストーリーは主人公である遺伝子関係の企業につとめる私、和泉とその弟の春という青年に関する話で、仙台で起こる連続放火事件の謎を解いていくという感じです。 一応ミステリーになるのかな。でも犯人とか途中でわかってしまったり。 ま、そういうのが全然気にならないぐらい面白い本でした。 春の出生が複雑で母親が連続強姦魔にレイプされた時に身ごもってしまった子で、ストーリー自体も結構重いんですけど、でも不思議と読みながら暗くならない。 これも、兄弟たちや父親との痛快な会話のおかげかなぁ。
読みながら、色々な箇所でうなずいたりはっとしたり、笑ったり感動したりとするんですけど、 その中でも一番好きなシーンはここ。 和泉が父親にどうしてレイプ犯の子産む事にしたのかと訊いたときの会話なんですが、ものすごく父親の一言が光ってます。
「母さんから妊娠を告げられた時、何をを考えたの」 後になって、訊ねた事がある。 「俺は咄嗟に、神様に相談したんだ」と言った。「笑うだろ」 「信仰もないくせに?」軽蔑はしなかったが、意外だった。 「信仰もないくせに、だな。一瞬のことだったんだろうが、俺は空を見上げて質問をぶつけていたんだ。どうすることが正解なのか教えてくれとな。即席で、神に祈ったわけだ。」 「節操がない」 「ないな。必死だったんだ」 「突然の質問に、返事があったわけ?」 「あったな。声が聞こえた」 「予想外の展開だ」 「思い違いかもしれないが、はっきりと聞こえた。頭の中に怒鳴り声が聞こえたのだ」 「神様が怒鳴るとはね」 それは貴重な体験に思われた。「何と言って来たの?」 「『自分で考えろ!』」 「は?」 「『自分で考えろ!』ってな。そういう声がしたんだ」 「それが答え?」私は吹き出した。「無責任にもほどがあるじゃないか」 「だがな、考えてみると、これは神様の在り方としては、なかなか正しい」 「ふうん」 「で、俺は即座に決断した。自分で考えたのだ」
神様の一言。凄い。 そして、その一言をきき、即座に決断した父は凄い!!
父親は、自分の子じゃないとわかってても普通に春を自分の子として育ててるんですが、父親の言葉一言一言が普通でいて、それでいて心強くてとても素敵でした。救われる。 春はいい両親のもとに産まれたなぁって思います。
話はもちろん面白いですけど、春って人物がこれまた魅力的に書かれてます。惚れますって、これは(笑) レイプを許す事は出来ないけど、その事件がなかったら自分が産まれる事はなかった、と事件の事を肯定することも否定する事もできず、そんな矛盾を抱えてるせいか、なんか不安定で、それでいてガンジーを尊敬し、犬を愛し、色々なジンクスを信じとても不思議キャラとして書かれてます。惹かれますね。
別段異常な兄弟愛はありませんけど、でも、兄弟が仲良く話してるシーンは満載で、とても読んでて楽しかったです。 父親が、兄弟が仲良くしてる姿を見てると喜びますが、私も非常に喜んで読んでましたvv
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