探偵さんの日常
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| 2003年03月05日(水) |
金を借りて逃げたら山中で惨殺される理由�� |
探偵ファイルより抜粋です。
中谷と別れた後、マルタイの事務所に戻ってみた。 14畳ほどの事務所には、安物の什器があるだけだ。 パソコンも、2世代ほど前の型。見せ掛けのためにしつらえたのだろう。 他にもそこかしこに、ゴト師特有の臭いがプンプンしていた。 パソコンのコンセントをさし、もう一度立ち上げてみた。 お詫び、とタイトルのついたメモ帳以外、見事に何のファイルも無い。 今時、インターネットにもつながってない。 ゴミは中谷の前に来た金融業者が一足先に持って帰っていたので、 手がかりは何一つ無いかのように見えた。
私は自分の車からコロコロを持ってきて、絨毯の上を這わせた。 女の長い髪と・・・犬の毛。知り合いの動物病院に見せると、 それはヨークシャーテリアのものだと分かった。
さっそく、半径2キロにある動物病院、 ペットの美容院やホテルに確認を取る。 すると、現場から百メートル、環六沿いの美容院に 犬が預けられているのが判明した。
マルタイの会社社員ということで犬の様子を見に行く。 飼い主(マルタイとその愛人)は海外に旅行中。 引き取りは五日後、となっていた。
マルタイの死体が、それから二日後に出た。 雑居ビルから飛び降り自殺だ。あまりにも平凡な出来事なので、 新聞には一切、載らなかった。もちろん、遺書もない。 警察は、体のどこかに刺し傷でもない限り、動かない。 とりあえず、警察署に電話をして、知り合いの刑事に マルタイの現況を伝えた。別の事件で忙しいそうだ。 上の空、という感じだったので、たった2分で会話を終える。 その一週間後、マルタイの関係者が群馬の山中で死体で発見される。 素っ裸で車のトランクの中。これはさすがに夕刻のニュースに流れたが、 たったそれっきりだった。
依頼者には電話で御悔やみを告げた。探偵も初動捜査が肝心。 もう少し早い依頼だったら、死なせずに済んだかも知れないが、 いまさら何を言っても後の祭り。
人の命は、いつも紙一重。これらの事件は今もなお、未解決である。 金貸しの上前をはねたいのなら、命を張る覚悟で。
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