猫の足跡
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2002年06月21日(金) 白鳥とワインの湖におぼれる

 T嬢のご招待で行って参りました。牧阿佐美バレエ団『白鳥の湖』

 結構、バレエ観に行くのは好きで、年に数回なにかしらの公演に出かけるのですが、どうもバレエ、スケート、体操、新体操などスポーツ芸術(バレエをスポーツと呼んでよいかは議論の余地がありますが)の世界に関しては「ロシア偏重、日本軽視」が染み付いてまして、いままで日本のバレエ団の公演を敬遠しておりました。特に、いわゆる『クラッシックバリバリの白物』は、もともとそんなに好き!ってわけでもないし、どうせ観るならとびっきり美しくないと…というわけで、ロシア系バレエ団のものしか観たことがなく、今回ありがたくご招待いただいてしまいました。

 お席は関係者席らしい正面上方。いやーいいなぁ、役得役得(違うか)。席についてしばらく待って、開演したのですが…。

 幕が上がってでてきたのは、前頭部が頭頂方向へ著しく展開した西洋タイツ男。……。王子…のはずだけど、こ、これは…。まさか、新演出で王子の父から登場か?と疑ってしまいましたよ。
 西洋人金髪さんの前頭部展開傾向については各種事例にて重々承知(笑)ですが、仮にも王子を騙るからには、それなりの手立てをとっていただいたほうがよろしいと思うんですよねぇ。それこそ「ルイなんとか風巻き髪」とか「かぼちゃズボン」は喜んで許すから「××(カタカナ2文字。伏せ字)」だけはナシにして欲しかったな…。オデットがかわいそうじゃん。

 そのオデットは草刈民代。あの「Shall we dance?」の方ですね。映画や雑誌で有名になってしまっただけに、果たして実力のほどはいかがなものなのか?と思っておりましたが、やはり映像は裏切りませんね。実物もしっとりと美しい白鳥でした。

 まあ難を言えば、欧米系ダンサーの発する「私がプリマよっ!おだまりっ!」というオーラはあまり感じられず、特に白鳥の時には他の白鳥に混じってしまい「あれ、どれがオデット?」などということもありました。もしかしたら、これがアジア系ダンサーのきめ細かい表現なのかもしれないのですが(日本のバレエ団のプリマを生で見たことが少ないのでなんともいえません)、自己主張の少なさにはちょっぴり物足りない印象でしたね。

 もちろん、ダンサーのテクニックを存分に披露する見せ場、オディール(黒鳥)のパートでは、流石にびしっとキメてくださいまして、ワクワクさせてくれる踊りが見られましたが、それでもやっぱり「見る人の心と目を惹きつけて離さない」というレベルではなかったような気もします。
 (実際は、十分堪能したので、「あえて云々」とか「世界最高峰のプリマと比べて云々」という次元の話です。払ってないけれどチケットの料金分以上に素晴らしかったと断言します)

 他のダンサーについて。
 これも結構良かったです。バレエ団のレベルの高さを感じました。でも「日本人も手脚が伸びて、体型がきれいになった」とよく言われますが…、確かに、事実ではありますが、やっぱりロシア系完璧コール・ドを基準にしてしまうと、「う、長さが足りない。揃ってない」とケチを付けたくなってしまうんですよね…。

 で、次回は同じ牧阿佐美バレエ団の気鋭のプリマ、身長が170センチほどある日本人離れした体型を誇るとかいう、上野さんの白鳥も観てみたいと思います(なんだかんだ言って、また次をというのだから、けっこう良かったということですな、わはは)。上野さんってたぶんローザンヌをTVで観たことがあるはずなんだけれど、そんなに背高かったかしら?

 ただ、タッパのあるダンサーの演技を観ると、『白鳥』なのにオデットとしての良さよりも、オディールの良さで測ってしまうかもしれません。ホント、現代の女の眼で観ると、オデットって魅力ないんですよねー。「ああっ、私は囚われの身、あなたの本当の愛だけが私を救い出してくださるの…、あなただけを信じます」みたいなこと言ってへろへろとシナ作るだけですからね。それに比べて、オディールの魅力的なこと。「どう、私、魅力的でしょう? 私を見て! 美しいと思うなら、愛しているというならば、今すぐここで誓って!」と手、脚、腰、瞳の全てを使って王子を陥落させるのだから…。
 
 先程「白いバレエ」がそれほど好きではないと言ったのは、この辺も影響しているのかもしれません。お姫様のステレオタイプ満載ですからね。やっぱり派手派手しい「ドン・キ」とかの方がピンと来るんです。

 さて、観終わって、「観劇の後のちょっとしたお食事と素敵なお酒」と渋谷某所のワインバーに繰り出したのは良かったのだけれど、おとなしく「アフターシアターコース」+手ごろなボトルワイン1本くらいにしておけばよかったなあ。

 アラカルトにサービスのグラスシャンパンから始まって、後は適当に好みを伝えてグラスワインを持ってきてもらったんですが、出してくるもの来るものみんなグラン・クリュばっかり。「うわー、これ、グラスで幾ら取る気だろう?」と思いつつも、あまりに伝えた好みのイメージにぴったりでツボにはまった銘柄を持ってくるので、断れず、くぴくぴ飲んじゃいました。

 あの店員さん、全然そばにいた気配は無かったけど、「ボンヌ・マール寝かせてある」って話聞いてたのかしら?…としたらいいようにやられちゃったなぁ。聞いてなかったとしたら、すごいプロの腕前だなあ。

 もちろん、美味しくって、もうやっぱり最高。と思ったくらいだからなんの文句も無いんですが、二人で軽く食べて飲んで2万5千円は、覚悟してたものの絶句。はしたなくも明細見てしまったら、私の飲んだ最後の2杯で5000円でございました。

 ゴメンッ!T嬢。あなたがお金持ちだから許されたことです。

 いやー、これに懲りず、また行こうね。我が勤務先の近くにもいいワインバー見つけましたから。
 


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