彼はそこで、本当に満たされていた。にもかかわらず、彼の中には硬い種子のように、ひとつの哀しみが埋もれていたのだった。世界はこれほどにも美しいのに、それは彼のものではない。なぜなら、彼は異端者だったからだ。小野不由美:屍鬼(二),p.353,新潮社.