まずいことに、この国が未完に思えてきた。工程を大幅にはしょった、実は未完成の船に乗り込んでしまっているような心地になってくる。結局俺は感じたままを口にした。朝香二尉は笑う。「未完なら、一度母港に戻ってみるのもいいかも知れないね」彼は言った。「わたしは不良品でないことを祈りたい」 (抜粋)古処誠二:未完成,p.300,講談社.