『たけぐせの随・弐』

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2005年08月10日(水) 「参道のおばあちゃん」

今日はバイト。

あるお寺の参道の傍らに腰掛け昼休憩をとっていた。

参道の石畳を歩いてくるおばあちゃんを認めると、
そのおばあちゃんは当たり前のように

こんにちは、と。

わたしも自然と、こんにちは、と返した。

もうお昼は食べたのかい?

はい、今食べたところです。

それは良かった、と言っておばあちゃんはわたしの隣に腰を下ろした。

ここの後ろに防空壕があるんだよ。

私達が座っているのは
参道の石畳から、綺麗な水のながれるU字溝をはさんで
ひざ丈くらいに石が積み上げられた路肩で、
その後ろは整然と 樹齢5・60年の杉が立ち並び、
そのまた後ろは雑然と木々が生い茂っている。

おばあちゃんはその中の一点を指差し、

そこ、と。

わたしは促されるように石の路肩にあがっていき、
木々の中へと入って行くと、
おばあちゃんの言うように、
木々に紛れて防空壕が小さく口を開いていた。


路肩に戻るとまた並んで座った。

その地域の事・戦時中の事・そのお寺の事・おばあちゃんの身内の事・・・
おばあちゃんは次から次へと語ってくれた。

足元を流れるU字溝の水が湧き水であることを知った。
夏の朝には蒸気して、白い布をずーっと広げたようで
すごく幻想的らしい。その光景は目に浮かぶ。

わたしはおばあちゃんの話を聞きながら、
田舎の熊本で過ごした小学生時代の日々を思い起こしていた。

このおばあちゃんが見ているものと、
あの頃のわたしが見ているものはきっと同じなのだろうなと思った。

できればその時間にまだ身を置いておきたかったが、
昼休憩はそろそろ終わる。

またどこかで会いましょう。
別れ際そう言いながら、瀬を向け片手をあげるおばあちゃん。

わたしは急ぎ、バイトの現場へ走る。

わたしはどこに走っているのか。
ひどく違和感を覚えた。


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