 |
 |
■■■
■■
■ 静けさの秘密
いつもどことなく賑やかしい実家なのだが、なんだかとても静かに感じた。 ただよう空気にたくさん隙間があって、そこにぽわんとした空白があるかんじ。 なんだかのんびりしていたのですが、ふとみんなが気づいたこと。
「何かが足りない」 そして皆がいっせいにはたと気付いた。 「電話が鳴っていない」
私が帰ったのが金曜の深夜なのだが、その前夜はひどい雷雨が降ったそうだ。 30分から1時間くらい、「ピカッ、ごろごろごろごろ。ピカッ、ごろごろごろごろ」 が続いていたという。もしかして雷の影響で電話が故障してしまったのかも しれない、と丸二日経ってから気付いた。必要な連絡は個々人の携帯電話に かかってくるし、ネットも繋がっていたので、電話が故障しているなど 考えには全く及ばなかった。なにはともあれNTTに苦情を申し立てる。
暑い日曜の昼下がりに、NTTの名札を付けて緑色のユニフォームを着た、 頭の禿げたおじさんがやってきた。額に粒状の汗を浮かべながら、そそくさと 2階の親機をみてくれる。そしてとても困ったような顔をして 「すみません。この機種はもう修理できないのです」と言う。 確かに10年以上使ってきて、留守電機能も何もないシンプルな電話は もう見かけなくなっていた。「他の子機電話とインターフォンもダメですね。 すみませんがそちらも買い換えて頂くことになります」
別に田舎の家が広いと自慢しているわけではないが、ウチには何故か 電話が5台もあった。部屋に備え付けのコード付き電話なので、 「人間が移動するのが面倒くさい」と次々と増設したのだ。 今では住人よりも電話の数が多くなっていた。 まったく、ものぐさというか、節操がないというか。。。
それが、超現代式ばりばりデジタル機能満載の機種になるという。 保留+転送機能をやっとマスターした祖母に、この手の操作は対応できるのか、 いちばん気がかり。
それにしても、このNTTのおじさん、雷の翌朝から夜もほとんど寝ずに 「500件近く」修理に行ったという。よほどお疲れらしく、「50件」と「500件」 を言い間違えているようだった。いや、彼にしてみれば「500件近く回った くらいに、しんどい作業」だったのだろう。同情しちゃうな。
だって、疲労でろくすっぽ呂律(ろれつ)も回らない舌で「すみません」 を連発してるんだもん。電話の故障は君のせいじゃなくって、雷さんの せいなのにさ。
とんだ災難を受けたのは、彼のようなNTTの修理工さんなのかもね。 だって、実家の面々は至って平然な顔で「あ、いいですよ。全部買い換えます」 とさらりと言ってたし。
電話の呼び出し音が聞こえないだけで、家の中はこんなにも ひっそりとしてるんですね。私は別にぜんぜん不便さは感じなかったんだけど。
2001年07月02日(月)
|
|
 |