月のシズク
mamico



 カレンダーをめくる

昨夜、眠る前にベットにあがり、カレンダーをピリッと一枚めくった。
今年は、ハンス・シルべスターという写真家の「ギリシャの猫」という
シリーズのものを寝室の壁に掛けている。月めくりの暦。

外国の写真家のカレンダーなのに、月名は陰暦を使用している。
昨日までは「弥生」、今日から「卯月」と記されている。
地中海の白い石塀の上に、牛ネコと茶トラ猫が向き合っている写真。
うすっぺらい紙を一枚めくっただけなのに、部屋の雰囲気が微妙に変化する。

今朝カーテンを開けたときに、カレンダーが掛けられた壁に差し込む光を見て、
「ああ、昨日とは違うのだ」と感じた。あたたかな朝日の中で、そう感じた。
茶トラの子猫の、ぴんと立った両耳は、どんな音をとらえているのだろう。
季節の足音か、牛ネコの求愛か(笑)

ちなみに、去年はサン・テグジュペリが最期の飛行に出る前の横顔を撮した
大判の一枚カレンダーを貼っていた。しかし、コレ、月名も曜日もドイツ語で、
おまけに休日もドイツ仕様だったので、ぜんぜん役に立たなかった。
なので、私は毎日、飽きもせずサン・テグジュペリの横顔を眺めた。
飛行の時に着用するマスクの痕が、彼の口のまわりに丸く残っていた。

去年のわたしの親密な同居人よ。
そなたは過去になれり。

カレンダーをピリッとめくると、心の皮も一枚、ピリッと剥がれ落ちる。
これを、キモチの脱皮と呼んでしまっては、都合が良すぎるだろうか。



2002年04月01日(月)
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