月のシズク
mamico



 ネパールのホテル、青い服、トルソー

嬉しいような、なつかしいような、儚い夢をみた。
季節はクリスマスで、ネパールにあるオランダ風の背の高いホテルにいた。

ネパールにそんな立派なホテルがあるかなんて知らないけれど、ともかくそこは
ネパールで、バルコニーに出ると、眼下の広い石畳の広場で、クリスマスの催しが
開かれていた。部屋の真下では舞踏会が開かれ、丸いワイヤー入りのドレスを着た
女たちが音楽に合わせてくるくる回っていた。右下では黒い衣装をきたオーケストラ
がワルツを演奏していた。舞踏と音楽がちぐはぐで、燕尾服の指揮者はおたおた
しながら白い指揮棒でリズムを刻んでいた。

そして、目の前には、この部屋と同じ高さくらいの(7階ぐらいだった)人間
クリスマスツリーができあがっていた。人が何人も積み重なって、ツリーになる
のだ。なんだか危なかしくて、でも愉快で、私はきっと笑いながらそれを見ていた。

東南アジア特有のなまあたたかい風が吹き、カーテンが揺れていた。
「お待たせしました。アナタへの贈り物です」
と、メイドがトルソーを部屋に運び入れた。
胸元にドレープがある白い袖無しのブラウスと、青いスカート。
「まずは、このお手紙をお読みください」
メイドは私に、巻きたばこのような小さな紙筒を手渡した。

私はそれを受け取り、茶色の麻紐をほどき、くるくると広げる。
トレーシングペーパーのような薄い水色の紙に、見覚えのある癖のある文字。

「この服は私がつくりました。遅くなったけれど、誕生日プレゼントです。
 アナタとこうして一緒に旅に出られて、とても嬉しく思います」

手紙を読み終えて顔をあげると、そこにはユキコがいた。
もうずっと昔に、私の前から消えてしまったユキコが、にっこりわらっていた。
「いきましょう」と彼女は私の手を取り、絨毯が敷かれた廊下に出た。
私はユキコが創ってくれた白いブラウスと青いスカートを着ていた。

そこで眼が覚めた。
雨の音がして、低気圧通過に伴う偏頭痛が私の前頭葉を襲ったけれど、それでも、
なんだか久しぶりに幸福な夢をみたようで、私はいつまでもベッドで微睡んでいた。


2003年01月27日(月)
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