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■ デヴィ夫人というキャラクター
あたしは割とこのご婦人が好きだったりします。 まあ今現在の彼女はあんまりいただけませんが、飽くなき上昇志向と自己顕示欲の強さはいっそ潔いとさえ思えるのです。
戦前戦後どこの家庭も貧しく、母と弟と三人暮らしの生活のため彼女も高校在学中からホステスをしていました。その美貌と社交性に注目したある商社マンたちはインドネシア周辺のあらゆる利権争いを有利に運ぶため、時の大統領スカルノに彼女を「献上」します。企業の思惑と一人の女性の野心が「ラトナ・サリ・デヴィ」という奇妙なキャラクターを生み出したわけですね。
お床上手な女が自分のカラダを武器に成り上がった、というのが今ほどマスコミの発達していなかった当時の一般的な彼女のイメージでした。 その後9・30クーデターでスカルノ大統領は失脚し、第三夫人であったデヴィ夫人は一旦帰国しますが既に母は病死、弟は母の葬儀の最中に自殺してしまい天涯孤独状態で娘のカリーナを出産。日毎激しくなるマスコミ攻勢に追われるようにパリへ移住します。 その後ヨーロッパを転々とし政局の落ち着いたインドネシアにも一時拠点を移すなどして、現在に至っています。
スカルノが軟禁中に妊娠したのは不自然だ、とか悲劇の夫人を演じつつしっかり自分用の財産を別途確保していた等々ダークな噂は枚挙にいとまがないのですが、そこまで成り上がるのにどれだけ努力し、辛酸を舐め、差別と偏見に耐えたかがごっそり抜け落ちてしまっているようで、もうちょっと正当な評価があってもいいのではないかと思います。 40年も前に二十歳そこそこの女の子が政府首脳や外交のお歴々を前に「これからは日本の技術力、中国の人力、そしてインドネシアの資源力が世界を率いてゆくでしょう」と演説してるんですよ。これって凄いことだと思いません?
彼女のドラマティックに見える人生の一部始終は、深田祐介の「神鷲(ガルーダ)商人」という小説に虚実取り混ぜて書かれていますので、興味のある方は読んでみて下さいね。
2002年02月22日(金)
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