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「槞梛俚庵(るなりあむ)


時折綴

2006年02月26日(日) 山抱く衣 〜蟲師〜

chimomoの大学入試で、心身ともに多忙だった間も「蟲師」は見逃さなかった。
あの作品の「哀しさ」「儚さ」、ギンコの「温かさ」が大好きで。

この「時折綴」にアップしなかったお話も、どれも胸に響くものばかり。
今日の「山抱く衣」も、その中の秀逸な作品なの。

--------あらすじ--------

或る天才絵師が居た。
彼が衣に描いた山の絵から、時折ゆらゆらと煙が立ち昇る。
まるで飯炊きのような。
彼は名声と引き換えに、故郷の影を失っていた。
それに気づいた彼は、帰郷するが、もうそこにはかつての穏やかだった山里はなくなっていた。
父も姉も―――。
そしてその衣に棲んでいたのは、故郷の山に棲む蟲だった。

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生まれ育った土地には、懐かしい匂いがあると思う。
空気の匂い
土や樹木の匂い

わたしは生まれも育ちも東京だけど、狭い東京の中を移動しても
この地にはどこにも無い「何か」を感じる。
吹き抜ける風もまろやかだし、溢れる樹木の緑が優しい。
たくさんの野鳥のさえずりが、いつも迎えてくれる場所。

生まれ育つうち、その土地で収穫された作物などを食べることで、自然と身体の中に摂り込まれる
「産土(ウブスナ)」という蟲がこのお話の源。

もしかしたら、わたしにもその「何か」が棲んでいるから、この地の風を
匂いを、ほっとするやすらぎを感じるのかも知れない。
「産土」は、人を守ってくれているんじゃないかと思う。

この「山抱く衣」は、挫折と失望と哀しみの中にありながらも、一筋射した光を感じるお話。
もちろん、その光を呼び込んだのはギンコなのだけれど。

次は、19話「天辺の糸」。



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冰月まひな [MAIL] [HOMEPAGE]