chimomoの大学入試で、心身ともに多忙だった間も「蟲師」は見逃さなかった。 あの作品の「哀しさ」「儚さ」、ギンコの「温かさ」が大好きで。
この「時折綴」にアップしなかったお話も、どれも胸に響くものばかり。 今日の「山抱く衣」も、その中の秀逸な作品なの。
--------あらすじ--------
或る天才絵師が居た。 彼が衣に描いた山の絵から、時折ゆらゆらと煙が立ち昇る。 まるで飯炊きのような。 彼は名声と引き換えに、故郷の影を失っていた。 それに気づいた彼は、帰郷するが、もうそこにはかつての穏やかだった山里はなくなっていた。 父も姉も―――。 そしてその衣に棲んでいたのは、故郷の山に棲む蟲だった。
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生まれ育った土地には、懐かしい匂いがあると思う。 空気の匂い 土や樹木の匂い
わたしは生まれも育ちも東京だけど、狭い東京の中を移動しても この地にはどこにも無い「何か」を感じる。 吹き抜ける風もまろやかだし、溢れる樹木の緑が優しい。 たくさんの野鳥のさえずりが、いつも迎えてくれる場所。
生まれ育つうち、その土地で収穫された作物などを食べることで、自然と身体の中に摂り込まれる 「産土(ウブスナ)」という蟲がこのお話の源。
もしかしたら、わたしにもその「何か」が棲んでいるから、この地の風を 匂いを、ほっとするやすらぎを感じるのかも知れない。 「産土」は、人を守ってくれているんじゃないかと思う。
この「山抱く衣」は、挫折と失望と哀しみの中にありながらも、一筋射した光を感じるお話。 もちろん、その光を呼び込んだのはギンコなのだけれど。
次は、19話「天辺の糸」。
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