2001年08月28日(火) |
ちばらくと回らぬ舌も八代目 |
最近読み終えた『歌麿殺贋事件』(高橋克彦)の中に”初代坂東しうかの揚巻”を描いた浮世絵が出てきて、それを見たらどーにもまた『傾く滝』が読みたくなって、再読。う、うつくしい。宮永先生じゃないけど、なんて美しいのかしら〜とハマったあの頃と同じくウットリしてしまいました。八代目(団十郎)は勿論のことですが、作品世界がどうにも好き。宮永先生と八代目カップルはいわずもがな、玉三郎(後改めしうか。大和屋)とのコンビが結構好きで。あーこの二人でやって欲しかったよ〜『夜半情浮名横櫛』(通称『切られ与三郎』)!! その勢いでやっぱり『花闇』を読んでしまう。田之太夫(三代目澤村田之助。紀伊国屋)もなんて美しいの〜ってな感じで……右足を落とし、左足を落とし、それでもなお美しく舞台に立ち続け、くずおれてゆくさまが、たまらん!です。こういう、あの江戸幕末期であったればこそ、咲き乱れた頽廃の美を現代に復元させることはおよそ不可能な話なのだけれど、ほんとこの目で見られたらいいなあと思うのよね……。華やかな役者達が、舞台がはねるとご贔屓達に色を売ったという背景が、なんともいえぬ色気を備えた役者を生んだということを考えると、ある条件下の中からしか生まれない美というものが確かにこの世には存在するのだなあ……なーんて。
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