2007年11月25日(日) |
魅音さんに焦点を当ててみた。 |
いつもと同じ学校帰りの夕方、圭一とレナ、魅音の3人は ふざけあいながら田んぼのあぜ道を歩いていた。 今日の罰ゲームは圭一で『巫女うさぎ』 袴姿にバニーのカチューシャがなんともアンバランスである。 途中すれ違う村人もその姿を見て察する。 今日の敗者は前原屋敷の坊ちゃんか…と。 コスプレ姿での帰宅はすでにもう見慣れた光景なのであった。
しばらく歩くと道も少し太くなり、やがて水車小屋が見えてきた。
(…今日もここで圭ちゃんとお別れか…)
毎日の事なのだが、この瞬間はいつもそう思ってしまう。 かすかに漏れる溜息。 私より少しでも長く圭ちゃんといられるレナが羨ましい。 しかしそんな素振りを2人に見せるわけにはいかない。 また明日すぐに会える…そう自分に言い聞かせ笑顔で手を振って別れた。
ひとり家路につく魅音。 園崎家正門から100mくらいのところまで来ると黒塗りの高級車が走ってくるのが見えた。 その高級車は魅音のところまで来るとゆっくりと止まる。 徐々にウインドウが下がり、そこから顔を出したのは葛西だった。
葛西「あ、魅音さん 組の方針で今からこのポスターを興宮一帯に貼る予定なんですが 出来のほうはどうでしょう?」
そう言うと葛西は魅音に1枚の紙を差し出した。
魅音「!?ポスターですか?どれどれ………!!!!!!!!!!!!!」
そのポスターを見て魅音の顔色が変わる。
魅音「あの・・・なんですかコレ…」

そこには『園崎家次期頭首 園崎魅音』と書いてあるではないか。 こんなものを貼られたらたまったものではない。
魅音「そうか…婆っちゃの仕業ね… 葛西さん、ちょっとここで待ってて下さい。 絶対貼りに行っちゃ駄目ですからね!!」
葛西にそう告げると魅音は屋敷に駆け込んだ。
お魎は自室の布団の上で上半身を起こして庭を眺めていた。 廊下にドタバタと魅音の足音が響く。
魅音「ちょっと婆っちゃ!!」
お魎「おお、魅音お帰り…どうしたね血相かえて…」
魅音「どうしたもこうもないよ、何あのポスター!! あんなの貼られたら私、恥ずかしくて もう興宮に行けなくなっちゃうよ〜」

お魎「…んなぁ魅音、興宮はウチの縄張りや… お前が次の頭首になる日もそう遠くはない…」 だぁで今のうちに宣伝しておかんとなぁ」
魅音「婆っちゃ、宣伝なんかいらないってー!!」
お魎「そうかんのぉ…ワシんときゃ 一時期はどこぉ行っても貼ってあったもんだがの…」
さも当然かのように話すお魎。 その筋の人間がやるだけに選挙ポスターよりも性質が悪いのは明白だ。 ここははっきりと釘を刺しておかなくてはならない。 興宮にいる詩音にも確実に迷惑がかかる…何せ双子なのだから。 そして私自身、明日からも平穏な日々を送るために…。
魅音「…婆っちゃ、とにかく葛西さんに断ってきます。 それから私の事に関しては先にひとこと言って下さい。 …これは次期頭首、園崎魅音からのお願いです」
魅音に緊張が走る。 次期頭首、そして孫とはいえ園崎お魎に意見をするという事は重い。 魅音には他の誰よりもそれがわかっていた。
お魎「……んはは…次期頭首からのお願い……か。 魅音も言うようになったもんさね。 これは将来が楽しみやぁ・・・」
お魎は肩を揺らして笑っていた。 どうやら機嫌を損ねてはいないらしい、魅音はホッと胸を撫で下ろした。
魅音「………というわけで葛西さん、ポスターは禁止となります。 御苦労さまでした」
葛西「そうですか……で、頭首のご様子はいかがでしたか?」
何やら不安げに葛西は聞いてきた。
魅音「ああ、婆っちゃですか?私が断ったら笑ってましたよ」
葛西「………あなたは大した人だ。 正直私も魅音さんと…詩音さんも困るだろうなと思ってましたが 私には何もできませんでした…すみません、ありがとうございます」
葛西は深々と頭を下げた。 結果的に詩音にも迷惑がかからなくなったからであろう。 大切に想ってくれる人がいる……詩音もちょっと羨ましい。
魅音「いえ、別にいいんですよ、葛西さん。 じゃあポスターの処分のほうお願いします。 ……あと、これからも詩音のこと頼みますね〜」
こうして惨劇(?)は回避された。 明日からも平凡ながらも楽しい日々が待ち受けているはず。 ああ、夜が明けるのが待ち遠しい。
…ハヤク圭チャンニアイタイ…
(終わり)
と、いうわけで突然ですが今思いついた話を書いてみました。 久しぶりに文字ネタやったような気がします。 昔SS(ショートストーリー)とかやった時振りではないでしょうか。 今となっては悠久の彼方…といった感じです。 あと漢字に関してなんですけどねぇ… 園崎家のところで『頭首』なのか『当主』なのかわかんなかったです。 …違ってたらすみません(´ω`;)
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