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2004年12月05日(日)
■「真空が流れる」佐藤弘(新潮11月号) 新潮新人賞を取った作品で、保坂和志に影響を受けていると聞いて、評判もわりとよいみたいで手にとってみました。小ぶりではあるけれど、落ち着いた語り口でなかなかよかったです。今後、本が出るようなことがあれば、読んでみたいと思いました。この作品は短いみたいで、これだけでは出版されないかも。タイトルは受賞にあたって改題したそうですが(元は「すべては優しさの中に消えていく」)、このタイトルもいまいち。改題しただけに気になってしまう。 主人公は高校生で、友人に頼まれてその自殺の場面をビデオに収め、編集している。初めから友人は死んでいるので、編集作業と死んだ友人との思い出が同時進行で進んでいく。ふたつの時間軸が連などで分かれているわけではなくて、いきなり過去に突入するのがふしぎと自然で上手い。インタビューでもっと力量があればもっと緻密に書けたはず、と言っているとおり、どこか書き落としているような印象も。物語は”真空”状態というか、宙ぶらりんなのに、主人公だけが最後が妙にすとんと着地しているのが気になりました。最後まで宙ぶらりんの印象を残さなければいけないのに、作品そのものがうまく落ちてしまったように錯覚してしまう。 ![]() |