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2005年06月17日(金)


■「漢方小説」中島たい子
けっこう迫力のあるタイトルなのですが、中身はまるでエッセイのようです。本職がシナリオライターとのことで、ああそんな感じ、とか素直に思ってしまいました。

賞と販売の関係なのか、紙技術の向上のせいか、最近は文字数が少なくても本をすぐ出す傾向にあるような気がします。久しぶりにちょっと厚めだぞと楽しみにしていたんですが(文字がぎっしり詰まっているほうがお得な気がしてしまう)、内容は非常にライトでした。軽いなーっ。でも本当に当り障りがないというか、主人公も病気なのに湿っぽくないし、わりと好感は持てました。

中は章ごとに分かれているのですが、もっと分割してエッセイのフリをして出してみるのも面白いんじゃなかろうかと思いました。読んでいて非常に疑わしいのは、実際にあったことをほとんどそのまま書いているのではないかと…。なんかそんな疑惑がふつふつと湧き上がって、最後まである種の気持ち悪さはあったかも。創作ならいいけれど、体験談としては拙い気が…。わたしは健康だから面白く読めるけど、病気で辛い思いをしたひとにとっては嫌な小説かもしれません。

読みどころとしては、東洋医学のさわり程度がなんとなくわかるようになっています。ポイントは、主人公が病気を本当に治そうと思っているのではなくて、なにか都合の悪いことのすりかえというか、言い訳のように病気でいようとしていたことを母親から指摘された部分。もうちょっと掘り下げていたらもっと面白かったと思うんだけどな。ツッコミどころとしては、章のタイトルに「わたしのテーマ」というのがあって、30過ぎて今さらそんな結論かよ!と思いましたです。そんなところを読むと、性格の可愛いひとが書いているのがよくわかります。