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2005年06月21日(火)


■紫陽花
トップの写真は白山神社のアジサイです。補正をかけたら少し青くなりましたが、実際は白です。アジサイはなんだか撮るのが難しかったです。

梅雨入りもしたしと思って、先日傘を洗ってみたのですが、ぜんぜん落ちませぬ。折り目のところが汚れてしまって、ネットで調べて消しゴムを使ってみたり、普通に洗ってみたりしたのですが、変化なし。洗剤を使った部分の防水加工が取れたことだけは確実にわかりました…!

■「容疑者の夜行列車」多和田葉子
や。これはかなり面白かったです。どぎまぎしました。夜行列車に乗って、目的地に向かう”あなた”の物語。多和田さんですから、やっぱり普通の小説ではなくて、味わえるのは旅の醍醐味というよりは、どんどん自分が何者であるのかわからなくなっている感覚でした。こう書くとオースターみたいかな。でもオースターともちょっと違っていて、自分と他人の境界がなくなるのではなくて、アイデンティティの問題といった方がいいような気がします。

うまく説明できない(本当は説明する努力をしなくてはいかんのですが)ので、以下から抜粋させていただきますと、
http://www.excite.co.jp/book/guide/profile_102.html

「(渡独して半年経って)日本語を全くしゃべらないうちに、日本語がわたしの生活から離れていってしまった感じだった。触れる物にも、自分の気分にも、ぴったりする日本語が見つからないのだった。ドイツ語はぴったりしなくて当然だろうが、母国語が離れていってしまうのは、霧の中で文字が見えなくなっていくようで恐ろしかった。わたしは、言葉無しで、ものを感じ、考え、決心するようになってきた。
そのうちわたしは、この言葉のない生活をドイツ語や日本語に<翻訳>するようになってきた。」(『カタコトのうわごと』より)

この感覚を頭ではなくて、感覚として体験できる小説でした。すごいすごい。

個人的気に入っているのはとくに前半で、言葉のうまく通じない異国の土地に行って、騙されるかも…いや本当にいい人なのかも…とドキドキしながらいろんな人に接しているところには、ちょっと自分を重ねてしまいました(笑)。あと電車から落っこちたのには心底びっくりした。

多和田さんの文章には隙がなくて、常に的確、という感じがあります。なのに行間から全編を通してぶわーっと浮き上がってくるものもあって、この人は本当に怖いです。