|
暗がりの中に、箱があるのです。 小さな小さな、箱があるのです。
鍵は何処かに、消えてしまって。 錠は何時しか、錆びてしまって。
暗がりの中に、箱があるのです。 小さな小さな、箱があるのです。
箱の中身がなんだったのか どうしても、思いだせないのです。 けれども足りないものはきっと 全部その箱の中なのです。
暗がりの中に、箱があるのです。 小さな小さな、箱があるのです。
箱の中身が、猫だったのか それとも別の、ものだったのか どうしても、思いだせないのです。 けれども足りないものはきっと 全てその箱の中なのです。
箱を開けようと手を伸ばしました。 触れた瞬間に世界が反転しました。 箱を開けようと手を伸ばしました。 開ケルナと拒絶されました。
暗がりの中に、箱があるのです。 小さな小さな、箱があるのです。 厳重に鍵をかけられた 小さな箱があるのです。
箱を開けねばならぬのです。 箱を開けねばきっと 何も変わらぬままなのです。
指先が触れた瞬間に世界は反転しました。 鍵は何処かに消えました。 硬い錠前を、開ける方法を知りません。
開けなくていいのでは、と誰かが言いました。 今のままでもいいのでは、と。 けれども、それでは駄目なのです。 何度も同じことを繰り返してしまうのです。
これは自作自演でしょうか。 それとも私の本意でしょうか。 そんな些細な区別さえ 今の私にはつかないのです。
暗がりの中に、箱があるのです。 小さな小さな、箱があるのです。 私はそれを開けねばならぬのです。 開けねばならぬのです。 開けねばならぬのです。
きっと箱の中には全てがあるのです。 この空白を埋める、全てがあるのです。
そうしたらきっと そうしたらきっと 何処で間違ったのかが、分かる筈なのです。
あのまま箱の外側を知らなければ いつか訪れる破綻の日まで 何処も歪まず 誰も傷つけず 過ごせた筈なのです。
暗がりの中に、箱があるのです。 小さな小さな、箱があるのです。 鍵は何処かへ、消えてしまって、 錠は何時しか、錆びてしまって、 開ける方法が、何処にも無いのです。
|
2007年12月13日(木)
|
|