魔法使いになりたかった、誰かがいた。
泣いてる彼女を慰めてあげたかった。
大丈夫だよと、言ってあげたかった。
笑顔を、あげたかった。

魔法使いになりたかった誰かは



でも決して、魔法使いにはなれなかった。




彼女の手を取れないまま
奇跡など起こせぬまま
其処に居たのは
「魔法使い」の名を冠した
ただの、道化。

魔法使いになりたかった、誰かがいた。
その誰かはただ、誰かを幸せをあげたかった。
その誰かはただ、誰かに笑顔をあげたかった。
ただ、
誰かが笑ってくれたら
魔法使いになりたかった誰かは、幸せだった。

例えその裏に見ないようにしていた何かがあったとしても
その時、その誰かにとって、それは、真実だった。

笑って欲しかった。
それだけでいいと、思ってた。
けど、本当は、違ってた。
だから誰かは、魔法使いにはなれなかった。

「少しだけ、何かが違っていたなら
 魔法使いになれただろうか
 笑顔をあげることができただろうか」

箒片手に空を見上げて
魔法使いになりたかった誰かは呟く
自前のとんがり帽子は重たく垂れて
黒いローブは熱を孕んで

「少しだけ、何かを変えることが出来ていたら
 魔法使いになれただろうか
 幸せをあげることができただろうか」

そんな仮定をぽつりと紡いで
誰かは歩いて来た道を悔やむ

魔法使いになりたかった、誰かがいた。
自分で求めたモノに、なろうとした。
けれども、誰かは決して
そうしたら誰かが何時か手を差し伸べてくれると思った。
たすけてくれると、おもってた。

魔法使いには、なれなかった。
己の為を他の為と言った、それが、多分理由。
2008年04月28日(月)

AGO。 / 走馬真人

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